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I will be with you 雑伊

▼I will be with you
 



何かぐねぐねとしたものが伊作の思考を支配している。
思考なんてものはもう本当は伊作には残っていなくて、ただぐねぐねとした固形のような液体のような柔らかなものがひたすらに脳を犯しているような、そんな感覚があるばかりである。そしてそれは快楽に近かった。

溶けかけた脳みそで伊作はぐるぐるまわる視界を懸命に見つめた。
木目模様の天井とそれから自分を覗き込む黒装束の男が見える。それが誰だか自分が何処に居るのか何時から居るのか伊作には分からない。

男は伊作の頭を撫でて、頬を撫でて、それから裸の胸を撫でて、そうしながら口移しで何かを与えた。それは快楽を与えて正気を奪う毒だったけれども、もう幾度もそれを与えられている伊作の意識は朦朧として、毒を飲み下していることも自分が服をまとっていないこともよく分からなかった。

どろどろグネグネしたものが視界を歪めている。
よく分からないが気持ち良いと伊作は思った。

そこで男に微笑みかけようと思ってそこで急に伊作は目の前の男を何故だか知らないが自分がとても憎んでいたことを思い出した。


「伊作君」

多分自分が憎んでいたらしい男を睨みつけると男は悲しげな声を出した。
いさくくん、その響きはよく聞いた気がするけれどいさくくん、という謎の音か鳴き声であるとしか伊作はもう認識できない。

「伊作君、そんな顔しないで笑ってよ」

男は忍だった。
男は伊作に恋をしてある晩、伊作の籍を置く学園に彼を攫いに来たのだった。
良い子の伊作は学園の皆に愛されており、その学園の皆も尽く良い子であったので伊作を攫うのを庇いに入る良い子たちを男はたくさん傷つけなくてはならなかった。

そうして攫うと伊作はもう男に笑いかけなくなった。
男の側に居るのも嫌がって何度も自分の命を絶とうとするので男は伊作の動きを封じなければならなかった。
けれど男は伊作に恋をしていたので例えばその四肢を捥いで床に転がしておくようなことは出来なかった。そこで薬で頭を壊してしまうことにした。それなら伊作も気持ちが良かろうと男は思ったのだった。

「伊作君、笑ってよ」

男はもう泣きそうに懇願している。
伊作は頭がフワフワとして感覚的にはとても気持ちが良かったがけれどなにかが不愉快だった。よく分からないが伊作は眉を顰めて首を振った。

男はザラザラと懐から薬を全部出した。一生分、気がおかしくなっていられるだけの量だった。それを全部口に含んで男は伊作を眺めた。

ごくん。

今度は口に含んだそれを伊作の唇に移してやることなく男はそれを飲み下した。
すると視界はドロドロと溶け始めていてその溶けかけた世界の遠くでようやく雑渡には大好きな伊作君が笑ったのが見えたのだった。






08/11/2

Imagesong:Love psychedelico「I will be with you」


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