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Dummy Box 雑伊

▼Dommy Box


箱が届けられた。
雑渡昆奈門、と書かれた紙の貼られた箱の中には人の骨とおもしきものが一揃い収まっていた。
伊作はそれを見るなり中身を粉々に粉砕して捨ててしまった。
それが昨晩のことである。


「酷いなぁ、捨ててしまうなんて。磨いて組み立てて君の側には置いてくれないのかい?」

コーちゃんみたいにさ、そう文句を言って現れた曲者に伊作は不快そうな顔をした。


「死んだんじゃないんですか。雑渡さん。」

雑渡と呼ばれた男は悲し気に首を振りながら、酷いなぁ、とまた呟いた。

「君が私の骨だと思っているものを可愛がっているのを見たかったんだけどねぇ」

それで骨を見繕って送ってみたのだよ。真顔でそう言う雑渡に伊作は優しげな顔を不愉快と嫌悪で一杯に歪めて吐き捨てた。

「あなたは馬鹿ですねえ」

こんなもの、と言って伊作は人骨を象った標本の首をその優しげな指で持ち上げる。
白い表面をつい、と撫でる仕草を雑渡は羨ましげに目を細めて眺める。それを横目に見て伊作はさらに眉を潜めた。


「ただの物ですよ」


がちゃあん・・・、と音をたてて骨格標本の首は砕け散った。
伊作が首を手放したからである。床の上には白い破片が散らばった。
雑渡が目を丸くしてそれを見ている前で、伊作は床に落ちている破片を丁寧に踏み潰して細かくしていった。ひとつひとつ。

「こんなものは、ちっとも大切じゃないんです。骨になれば、僕が哀れんだり手を差し伸べるとでもお思いですか。
僕が大切なのは、生きているものだけですよ」


馬鹿ですねえ、伊作は不快極まりないという顔で雑渡を見た。
それはそんなことで死んだら許しはしないという顔であった。

 
08/11/10




08/11/2

Imagesong:プラスティックトゥリー「Dummy Box」


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