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hate,red dip,it  雑伊

▼hate,red dip, it
 



   月の明るい夜であったので身を隠すには不利だということは既に分かっていた。
そうでなくとも前提からして不利であるというのに。

それでも出来るだけ闇の深そうな枝の茂った木の幹を選んで、身体を寄せて息を殺していると、項にひやりと冷たい金属の感触が触れてぎくりと身体が強張る。
何時の間にそこに居たのか、がさりと背後の木を揺らして黒装束に包帯の不気味な出で立ちの男が下りてくる。

「伊作くん、こんばんは」

クナイを突きつけて暢気に挨拶をしてきた曲者は喉が焼けているのだろう、いつもざらついた声しか出ない。

「雑渡さん、こんばんは」
 
僕も挨拶を返せば、ふふふっと耳元でざらざらの声が笑う。背後から胸の前で左腕が伸びてきてきつく抱きしめられる。右腕はクナイを突きつけたままなので僕は動かない。

「酷いなァ。今日、会いに行くよって言ったのにいつも隠れてしまうね、伊作君は」

探したよ、
そう言いながら荒れた指が僕の装束を次々と地面に落していく。両腕が僕の身体のいたるところを這い回っていたからもうクナイは突きつけられていないけど、僕は動かない。

「次はもっと見つからないように隠れますね」


すると困るなァなんて唇を歪めて笑った男に、もっと深く深く追いかけられたくて僕はまたそんなことを言うのだった。




08/11/3


Imagesong:プラスティックトゥリー「hate,red dip,it」



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