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鶴の告白(食満伊)/頭が悪い食満


▼鶴の告白


 

肘から手首の先まで皮膚がズタボロと言えるほどの擦り傷を作って部屋に戻ってきた俺を見て、まず伊作は絶叫した。
まァコレはかくかくしかじか色々あったわけで面倒くせェから説明は以下省略だ。

「また文次郎とやりあったんだろう!?」

ひとしき叫び終わった伊作はいつの間にか桶に水、包帯、消毒用の酒、と素早く用意して俺の前に座っていて、怪我の理由もすっぱり言い当てやがった。言い当てんなよ。あいつがらみで怪我したとか言うのなんかムカつくから隠してみた俺の男心がなんかアレだろうが。
まぁ文次郎も鼻からだくだくと血を流していたから良しとする。アレの鼻は一度折れたことがあるので蹴りを打ち込むとすぐ血が止まらなくなるのだ。

伊作が黙って手を出したので俺も黙ってすりむいた腕を差し出す。傷を洗い清めてそこに鮮やかな手並みで包帯を巻きながら伊作は俺にいつも通りの説教を食らわす…のを、俺はいつもどおり聞き流しながら珍しく早口に動く伊作の口の動きを眺めている。

「大体君はね、」

伊作が唇をつい、とつき出すように尖らせた。
…ので、俺はそこに口付けた。

なんでだ。

そう思わず自分でツッコミを入れてしまうほどだから伊作はもっと、なんでだ、と思っている筈だった。
丸く見開いた目のまま表情筋一切が活動を停止している。
今は呆然としているが、我に返ったら怒るだろう。どうせ怒られるなら、と俺は伊作の側頭部を両手でガシッと掴んで思いっきり柔らかい唇を堪能した。
超やわらけぇ。
あまりにも感動的だったので、俺は唇を押し付けるだけに飽き足らず、その表面を舐めてみたり緩く噛みついてみたりした。

「…っ、うわぁあ!!」

ここでようやく我に返った伊作が悲鳴を上げて俺の胸を突っ張るように押し返す。
ここで逃がすのは惜しい。

「もうちょっと」

俺は伊作の頭を両手でガッチリキープしたままで、意味の成さない声で喚いてる伊作の口の中に舌を突っ込んで中の粘膜やら舌やらをしゃぶりまくった。この辺までくるとなんと言うか俺も自棄だ。

存分に唇を吸って俺は伊作から離れた。
あとはなんというか怒られるの待ちだった。いや、しかし怒る以前に怖がられたり気持ち悪がられたりという反応もあり得るということを俺はここに至って気づいた。
伊作はというと顔を赤く染めたままぽかんと口を開いている。唇の端は口付けの余韻で唾液に濡れている。それを拭いもせずに阿呆の様に伊作は口をあけているから今にも涎が零れそうに見える。俺は下心無しに一年坊主にしてやるように手ぬぐいで拭ってやろうと思ったのだが、よくよく思い出すと出血を抑えるために傷口に手ぬぐいを当ててここまでやってきたので、使える手ぬぐいが無い。
仕方が無いので指で伊作の唇を拭う。ついでに指に付いた唾液を舐めてしまうと伊作が悲鳴を上げた。

このままぼうっとしてるようならもっと色々してやりたくなっただろうから、とりあえず良かった。説明しなくていいことだが、色々とは首を吸ったり胸を吸ったりその他諸々である。

巻きかけだった腕の包帯のは伊作が取り落としてしまって大分長く伸びていた。
伊作はそれに気づくと慌てたようだ。

「あ、ご、ごめん。これ巻き終わらせるからね」

包帯の先を拾ってくるくると巻き取り始める。なんというかもう…健気だ。俯いて包帯を巻き取っている伊作の顔を俺は見た。もうガン見だ。まだ顔が赤いのが可愛い。あと、なんかとりあえず睫が長い。

「あー、いや、俺の方こそ悪かったよ。接吻とかして」

ごとん、と伊作の手が包帯を取り落とした。
いいんだけど、それ巻いてくれねぇと俺動けないんだよな。や、全然いいんだけど。

暫く固まったあと伊作はまた包帯を巻き取り始めた。もう顔が真っ赤だ。その真っ赤な顔の伊作は、包帯の先がまだ俺の腕に巻かれているので、一巻き毎に近づいてくる。
近づいてくるので俺はなんとなく言わないつもりの言葉を口にした。

「なぁ伊作。俺、お前が好きだよ」

伊作の手が震えたので、また包帯を取り落としたりしないように手のひらごと握りしめてやる。
すると伊作が身を引こうとするのを感じて俺は手を離した。包帯は転げずに伊作の手の中に或る。

「なぁ、怖がんなよ。別に…お前が嫌ならもう何もしねぇし、それでも気持ち悪いんなら部屋だって出ていく。まぁ誰か代わってくれるだろ。そうだな。そうするから、だから俺がお前を好きでもまぁ安心しろよ。」

誓ってなんもしねぇ。と俺は伊作に勝手に接吻をした分際で説得力の無い説得を伊作にかました。すると伊作は意外にきっ、と強い眼差しで顔を上げた。

「留三郎、君は鶴かい?」
「あん?」

いや、人間だけど。とかそういうことを伊作が言ってるわけではない事は一応分かった。が、唐突に鳥に例えられて俺は首をかしげた。まぁなんだ、不思議ちゃん?って感じだ。

「正体を知られたからにはここにはいられません、ってさ。なんで失恋ありきで勝手に話を進めるかなァ。」

はいはい、鶴の恩返しな。把握した。
伊作はそこで言葉を切ってちょこんと正座をしたので、俺も胡坐をやめて伊作の前にしっかりと正座した。すると伊作はやがてぽつりと言った。

「僕だって君が好きだよ。」

大体、君はさ、と言って伊作が唇を尖らせた。ので、俺はそれに口付けた。なんでだ、とか野暮なことは聞いてくれるな。
伊作はそんな俺の腹を思い切り殴った。痛ってぇ。いやもう。ねぇだろ。

「…鶴どころか、鶏だよ君は。」
「は?」

だからお前の例えは訳分からん。分からん上に今のは鳩尾に深く入ったぞ。で、なんだ。その心得は。

「なんで3歩も歩いてないのに同じこと繰り返すかなぁぁぁぁぁあああ、もぉぉぉお!!!!」

次第にでかくなる伊作の語尾の最後には絶叫のように「好き!」と付け加えられた。


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