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君の僕はもう居ない(食満伊)/現実を見ない食満


▼君の僕はもう居ない
 

 
※卒業後





「変わらないな」

伊作の顔を見るなり留三郎はそう嬉しそうに言ったので伊作は僅かに眉を潜めた。
伊作は仕事の帰りだったので、返り血を浴びてはいないもののきっと死臭くさい筈だった。
伊作はもう人に手当てを施していて仕事を失敗したりはしない。
伊作は運は悪かったが、もう毎日穴に落ちるほどとろくさくない。

伊作は今ではちゃんと忍になった。

学園の良い子だったころから変わらずに居られるわけがない。


「留三郎、僕のこと見えてる?」


伊作は思わず留三郎に問い掛けた。
ははは、留三郎は笑って伊作を両腕で抱き締めた。

「見えてるさ。…嗚呼、薬の匂いがする。本当に変わらないなお前は」

伊作は薬草の類いを持ってることもあったが今日は持っていなかった。
忍は必要でないものは持ち歩かない。
留三郎は持ってもいない薬の匂いには気付けても伊作に染み付いた血の臭いも火薬の臭いも分からないのだった。

「留三郎、僕今どんな顔してる?」
「笑ってるだろ」


そう、
伊作は眉を潜めたまま言った。

じゃあ留三郎はもう僕を見てはいないんだね。
伊作は目を詰むって、ばいばい、と言った。


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