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義理堅き人/雑渡さんの猛アタック。(恥ずかしい) 雑伊

▼義理堅き人



 
 君には恩を返さなければならないから、と変なところで義理がたいタソガレドキ忍び組頭の雑渡昆奈門が来るたび来る度毎度違った土産を持参し続けて十何回目か、伊作はやっと少し困った顔をしてもう結構ですと少し強く土産を受け取るのを断った。
きょとんとひとつ目を瞬いた雑渡の手には何かは知らないが本日のお土産が風呂敷に包まってぶら下がっている。

「なんで?」

雑渡はひとつ首を傾げたが、伊作の部屋の葛篭やら押入れは今、伊作が雑渡から貰った贈り物で溢れかえっている。それは上等な着物だったり、流行りの店のちょっと手に入れにくい巾着だったり、南蛮の医学書や甘い菓子や、面白いところでは雑渡に良く似た姿の手袋人形なんてものだったりする。
異国の珍しい医学書の類には弾む気持ちを隠しきれない様子の伊作であったが、大概の場合はあまり質の良い物を貰っても自分では価値が分からないからとやんわり遠慮を口にしていた。すると雑渡は次に、いつも自分が使ってしまって悪いからと名目をつけて新品の包帯を束で持ってきたのだが、それは雑渡昆奈門三十体の全身を巻きあげてもまだ余ろうという量があった。そして今である。

「いつもいつもこうして頂き物をしては悪いからです。」
「いいんだ、私は君に恩を返したいのだから。」
「だけど、」

恩、と雑渡は口にする。
ある日、蒸した夏の戦場で雑渡は伊作と出会った。伊作に何ら関係の無い戦に参加する見ず知らずの一足軽兵、を装っていた雑渡の熱気と湿気に膿んだ傷口を伊作は清めて包帯を巻いてやった。以来雑渡はその恩をいつか返さねばと内々思っていたらしい。
忍術学園陣営とタソガレドキとの戦で、雑渡は自らの兵を引いてくれた。伊作としてはそれで十分である。

「恩なら当に返していただきました。」
「そうでもないさ」

雑渡は件の戦のときならず、校外実習中の伊作に情報を渡したり水を持たせたり親切にしていたが、それでも返しきれない恩があるのでせっせと贈り物を持ってくるという。たかが包帯を巻いてやった位で何をそんなにと伊作が言えば雑渡はそうではないと片手で制した。

「確かにその借りは返した。けれど私は君が嫌な顔せずに私を迎えてくれること、言葉を交わしてくれること、果ては君という人間が居てくれることに感謝しているのだ。これはそのお礼だよ。」

赤く絶句した伊作が呆けている間に雑渡はまた来るねと天井に消えていった。あとには本日のお土産が包みを解いて残っている。



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