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君を愛する/(コー伊←留) コーちゃんを愛する伊作の理系ロジック

▼君を愛す



結局僕にはコーちゃんしかいないんだよね。
決然たる表情で伊作が自室の白い骨を見上げるのに衝立の向こうで留三郎は生返事をした。


「おう、そうだな」


 伊作は肯定の返事がかえってきたことに気を良くするらしくて、うんうんそうだ、やっぱりこれがとても自然なことだとなにやらひとりで納得している。その上で突然愛してるよコーちゃんと聞こえてきたものだから留三郎は、なんだかな、と思った。
留三郎は伊作ともう6年も同じ部屋で寝起きしているからいまさら驚くとか呆れるとかはしないのだ。とにかくなんだかな、と思った。


「自然かどうかは知らねぇけどよ」
「それがさ、僕考えてみたんだけどね」


ひょい、と伊作が衝立の上から顔を出した。
その隣にしゃれこうべも頭を出した。なんのことはない、伊作が私物の骨格標本の頭蓋を、手に持って留三郎にみせているだけである。先ほどからコーちゃん、コーちゃんと伊作が呼んでいるのがこれである。
留三郎もいまさら心臓に悪いな等と思わないから、おう、なんだと顔を向けた。


「このコーちゃんは誰のものでしょう。」
「…お前のなんじゃねぇの?」


伊作が問う。留三郎が答える。
伊作は嬉しそうにふっふっふ、と笑って、そういうことだと言った。



「コーちゃんは僕のものだけど、でも人間は生きてる限り誰かのものになるなんてないんだよね。みんな怪我しないでねって言ったって怪我して帰ってくるし、死なないでねって言っても勝手に死ぬじゃない。人が僕の思い通りになるのなんて死んだあとだけなんだよ。」


イコール、僕にはコーちゃんしかいない。伊作は最初の結論に辿りついたようで、満足そうな得意そうな顔で留三郎を見返しているものだから、なんだかなぁ、と留三郎は再び思った。
伊作は満足そうだがどうにも寂しいことを言ってるようである。
留三郎は、死なないでやると言ってやれたらと思いはしたが、それこそ命の無い骨身でもなければそんなことも言えないのであった。



「なんだかな。」



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