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▽お花畑の番人
元来、私は綺麗なものが好きな性質でした。
私が今守っているのは大層可憐なお花畑で、これを荒らされるのは我慢がならないのです。
昨晩も礼儀知らずな不心得者が私の花畑に忍び込もうとしていたので、私はこの刀でもって悪党を追い出したところです。
悪党どもは私の黒い忍装束は見慣れているようでしたが、私の顔には大層驚いて逃げてゆきました。
しかしひとたび追い返しても、次から次へと別の悪党がやってくるのです。それというのも私の守るものが揃って大変美しい顔をしているのが、人の心を惑わせてやまないのでしょう。
けれど私は私の可憐なお花畑を踏み荒らされるようなことは我慢がならないのです。私はこのかた眠ったことがありません。
刀を構えて夜通し部屋の前で立っているのです。
今日も空が白む頃となりました。
「てか、前から思ってたんだけどよ」
白く朝日の射す中に立っている骨格標本に目を細めて留三郎は同室の伊作に呼びかけた。
「コーちゃんって朝起きると立ってる位置変わってる気しねェ?」
「ううん・・・?」
寝起きの良くない伊作はまだ眠たげに目を擦って留三郎の疑問を聞き流している。
コーちゃんと名前の付けられた骨格標本は伊作の私物であるが、それに装束を縫ってやっているのは留三郎である。すっかり部屋に馴染んでいる標本にはふたりして愛着をもって可愛がっているのだ。
さてその標本が動いたのどうのという問題をひとまず忘れて、留三郎は布団の上からいつまでも動かない伊作を起こしにかかる。
敷き布団を引っ張っるとごとん、と床に落ちた伊作が小さく呻いた。
昨晩部屋に夜這いをかけられようとしていたことなど露も知らず笑いあう子供に、嗚呼なんと愛らしいと骨格標本は密かに目を細めるのだった。
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は組みはお花畑ちゃん(頭の中含む)という話です。
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