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君の味方/やや46巻ネタ 雑伊


▼君の味方


 雑渡というのはなかなか聞き上手な男だった。
なので、なんだか知らないがいつもやたら嬉しそうな顔して忍術学園の保健室にやってくる雑渡というくせ者に、伊作はいつのまにか茶など出して世間話に花を咲かせたりしてしまうのだ。
 世間と言っても伊作の世間は狭い。たまに実習だとかなんだとかで出かけることはあっても基本的に学園で学び、飯を食い、遊んで、寝る伊作である。そこで伊作の話すことといえば、今日学園でこんなことがありましたとか、友達にこんなやつがいるんです、とか内輪話である。
そういう伊作の他愛も無い話を雑渡は嬉しそうに聞いた。伊作が話してくれる話なら、なんだっていい。そういう風に見える。
なにしろ雑渡は伊作に大変好意を寄せていて、敵城の忍びの癖に、私はずっと君の味方なんだよとかなんとか口にして憚らない男である。伊作と交わす言葉ならなんだろうと嬉しいのだろう。

「もう何年もここで暮らしていたようだ」

伊作君の友達をすっかり覚えてしまった、と言って雑渡は笑った。


「穴掘りの好きな子とか、変装の名人がいるだとか、会計委員長君と用具委員長君は仲が悪いとか、ね。」
「随分、熱心に聞いてらしたんですね」

伊作は自分の話を雑渡が細かく覚えていたことに驚いてしまった。雑渡は伊作の言ったことならなんでも覚えているのだそうだが、一方伊作は自分の言ったことを全部は覚えていない。
そんな話までしたかなぁ、なんて首を傾げて次のネタを考え始める。

「じゃあ、ええと…これは話しましたっけ?」

親しげに肩を寄せて口を開く伊作は要するにこの男を信頼しているのである。







タソガレドキの手勢が忍術学園を焼き払ったのはそれから幾日か後の晩のことである。

「信じていたのに」


燃え盛る学園から雑渡は伊作だけ引っ攫って、今は騒ぎから離れた山陰で遠目に火を眺めている。味方だなんて言って、と伊作は雑渡をなじったのだが、雑渡は首を傾げて素知らぬふりである。

「私は今でも君の味方のつもりだけどね。…それともあそこに帰るかい?」

雑渡はひょいと学園を指差して訊ねた。連れてってあげようかとも申し出る。それに伊作は帰れません、と弱々しく首を振る。
 背後では煌々と火が燃えている。きっと死傷者も出ただろうと伊作は思ったのだが、燃え盛る建物から下級生を避難誘導したり敵勢に応戦したりするために引き返すようなことは伊作には出来なかった。
 というのも学園が襲われて甚大な被害を被っていることも、まず真っ先に火薬庫に火が放たれたのも、余所者が知るはずのない細かな情報を伊作が流していた所為だったからである。

悪意は無いにしろ伊作のしたことは余りに被害甚大であった為、伊作はとうてい顔を上げて学園の人間たちの中にいられなかった。
うん、と雑渡は満足気に頷いた。

「君の立場はどうみたって裏切り者だものね」

伊作はさっと青褪めてどうしましょう、と口にした。それこそ雑渡が待っていた言葉であったので、雑渡は手を差し伸べて言うのだ。
こちらへおいで、守ってあげよう。

「私はいつだって君の味方だよ」



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伊作情報漏洩しすぎなんじゃねぇの、と思った46巻。
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