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僕の宗教/(伊作と三郎)思考回路が危ない三郎と命が危ない伊作

▼僕の宗教 優しい人間ばかり先に死ぬのだと、鉢屋三郎は結論に至った。  うん、それは確かにそのようだ。善法寺伊作は頷いた。 天は優しい人間を所望なのだ。そこで三郎は天が望むだけ満足するだけ人を殺めようと決意した。実習地に意地の悪い罠を仕掛けたり食堂の食事に毒を仕込んだりする。 ところで不運、不運の申し子と名高い善法寺伊作はそんな罠に半端に引っかかっては、嗚呼危なかったと言って生きている。落とし穴は踏み抜くけどその中で獲物を刺し殺そうと狙っている鋭い竹槍の元まで落ちていかない。危なかった危なかった、死に掛けた。そう言って戻ってくる。あとには隠れ場所が暴かれた役にも立たない大穴がぽかんと口を開けている。その穴もいずれ用具委員長なんかがみつけて埋めてしまうのである。 毒入りの食事なんかも何故か真っ先に口にするのは伊作なのだが、彼は大体解毒の世話なんかは自分で出来てしまうからやっぱり死んだりはしなかった。あとから食堂に食中毒発生のため封鎖、とか張り紙が貼られてしまいである。 鉢屋三郎は失望した。彼は早くあの世という国が満足するまであの世に人を送らなければいけなかった。そうでなければ大変なことになった。 「邪魔をしないで下さい」 三郎は殊のほか丁寧に伊作に頭を下げた。心からの懇願である。 「ごめんね」 伊作は優しく言った。優しく言ったけどもそれは言葉だけのことで伊作にはどうこうしてやる気もないのが見え透いていた。伊作の言葉は優しいが重みが無い。 分かっていただけないようだ。三郎はどうしようと思ってごくりと喉を鳴らした。背筋を冷たい汗が流れる。焦っていた。怖かった。優しい人間から死んでいくのだ。だから早いところあの世を満足させなければ、もう次に連れて行かれるのは誰か三郎には分かっていた。 「嗚呼、雷蔵が連れて行かれてしまったらどうしよう」 優しいねぇ、伊作は呟いた。

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