忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ループ2/ループ(鉢雷)の一方その頃。なんちゃって死にネタ 雑伊


▼ループ2  

※「ループ(鉢雷)」の世界観前提。

 
春の晩のことである。善法寺伊作が部屋で殺されているのが見つかったのは。

 その晩、伊作の目の前に見たこともない恐ろしい出で立ちの男がやってきたのである。雑渡昆奈門という名の男である。黒装束を着込んだその男は全身を包帯に覆われた木乃伊のような姿をしていて、薬草と膿みとが混じった独特の悪臭を纏っている。そしてそれは死体の匂いにとても近かった。

「向かえにきたよ」


雑渡はそう言って手を差し出すのだが、伊作には訳が分からない。おろおろと男と、男の降りてきた天井板と、部屋の出入り口とを代わる代わる見比べている。


「まさか今更とぼける気でもないだろう?」


伊作に覚えはないのだが、男は伊作を知っているらしい。春が来たら向かえにくるという約束だったのだと男は言う。伊作は緩く首を振った。雑渡はそれに酷く絶望すると同時に酷く怒りに駆られたらしい。
そして伊作が部屋で殺されているのを見つかったのが春の晩のことである。




ところでその一年たった夏に雑渡は戦場で伊作という少年と出会ったのである。




伊作は雑渡を一目見るとその包帯の下が酷く生んでいることに気がついて全身の包帯を取り替えてやった。
雑渡は狐につままれたような顔で伊作のことを見ていた。


「伊作君」


そう呼びかけられて果たして自分は名乗っただろうかと伊作は顔を上げた。


「君は何で死なないんだい?」


雑渡は訊ねた。もう何回聞いたかわからない質問である。雑渡はもう何度も夏の終わりの戦場で伊作に出会っている。雑渡はもう何度も春に向かえにいくという約束を伊作と交わしている。
 春が来て、迎えが来て、だけどそのときには新しく学園の最高学年にあがったばかりということになっている伊作に腹を立てて雑渡は幾度も伊作を殺している。


「なんのことでしょうか」

伊作は可愛らしく首を傾げている。雑渡はまた目の前の子が愛しくなって欲しくなって、その手を取って頼み込むのである。


「今度はしっかり覚えてね」

けれど学園の時間は同じ一年をぐるぐる繰り返すことが決まっているので雑渡はその一年も愛しい子を手に入れられたりはしないのだった。


PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする:

Copyright © No Mercy for mobile : All rights reserved

「No Mercy for mobile」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]