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ある告白/※雑渡さん死にネタ ホラー 雑伊


▼ある告白





「いらして下さったんですね」


伊作は月明かりにぼんやりと浮かぶ男の姿を嬉しそうに迎えた。常より更に顔の色の悪い男は雑渡昆奈門といって既にこの世に居ないものであるのを伊作は良く心得ている。

「雑渡さん、会いに来てくださってよかった」

伊作は夜着一枚の姿で立ち上がった。もう雑渡が訪れても救急箱は必要が無い。ふふふ、と伊作は少女の様に愛らしく微笑んだ。あなたなら化けて出てきてくださる気がしました。可笑しそうに口にした言葉は意外に本気の言葉であるらしい。
男は翳りのある表情のまま動かない。伊作は手を伸ばしてみて、その指が男の身体に触れる感触を捉えたことに歓喜の声をあげた。


「僕あなたに伝えなければいけないことがありました。雑渡さんあなたのことが好きです。愛しています。ご存知でしたか?」

期待を込めた目で伊作は男を見上げた。艶を含んだ動きで指先でつ、と雑渡の手の甲を辿る。男は動かない。伊作は気にも留めぬ様で片手で男の背に腕を回しながら、片手で夜着を割って己の性器を弄り始める。赤い唇が短く息を吐いて、伏せた睫の先が震える。
伊作の告白は続いている。

「愛していました。ずっとずっとです。
あなたが私を好いているとおっしゃった日も、何も言われなかった日も、あなたが私を無理矢理犯した日も、ただ包帯を替えるためだけに僕のところへ来ていた日も、ずっとずっと好きでした。
あなたの言葉を聞かぬ振りをしているときも、あなたが僕を愛するのを半ば諦め始めた時も、いらっしゃる回数が減り始めた時も、あなたに出すお茶の葉を用意しているときも、その葉に分からないように毒を混ぜているときも、あなたの死の匂いが濃くなるのを感じたときも、あなたの死んだ身体が腕の中で腐ってしまったときも、あなたがもう一度会いに来て下さった今このときも、

大好きです。雑渡さん。」


嗚呼、どうしてそんな顔するんですか?
伊作は毎夜、月明かりに要らぬ告白をし続ける。





参考:2ch『洒落にならない怖い話「一途な思い」』
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