忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

胸の内5


▼胸の内

エピローグ(再び室町より)



 三郎は己の胸を叩いた。雷蔵に渡さねばならないもの。それは三郎の胸の内にある。

「ここにあるものを渡さなければならないんだ。だけどどうして君に受け取ってもらえるか分からない」


それを聞くと雷蔵はぱちりと瞬きをしたのち笑った。三郎は示してみた左胸のあたり、その肉と骨の下には心というものが埋まっていると雷蔵は理解している。

「もう受け取っているよ」

雷蔵は言った。三郎には己の渡したいものが何であるか分からないのだが、雷蔵がそう言ったので己の渡したいものは雷蔵が全て心得ていたんだと解釈した。さて、しかし三郎には雷蔵の言うとおり自分が雷蔵になにかを渡せた気はまるでしないのである。

「だがしかし、雷蔵。私はどうにもそんな気がしないんだよ」

三郎はそう雷蔵に訴えた。

「ああ、五月蝿いね」

雷蔵は三郎に接吻した。三郎はぴたりと喚くのをやめた。

「受け取っているよ。お前が僕の顔を真似する時も、手を繋ぐ時も、抱きしめる時も、接吻をする時も、身体を貫く時も、お前の胸の内のものはもう貰っているよ。抱えきれないくらいだ。」

ああ、そんな風に渡すことの出来るものなのか。三郎は少し安堵した。三郎が渡したいものが何かは雷蔵が分かっているらしい。その雷蔵が言うのだから大丈夫だ。
 三郎は雷蔵の顔で雷蔵の手を握って抱きしめて接吻した。渡さねばならないものはこれで雷蔵のものになっただろうか。どうも疑わしい。

「不満かい?」

不信が顔に出ていたものか、雷蔵がそう訊ねた。ああ、三郎が頷いた。

「じゃあ、もっとお寄こしよ」

雷蔵が言って伸ばした指を三郎は捕らえた。そのまま頭をぶつけない様に気をつけながら雷蔵を床に引き倒すと、雷蔵は喉奥でくつくつと笑っている。
くらくらと頭に血が上るのを感じながら、三郎は確信した。




ああ、私は心の蔵まで君のもの。



 



長編を読んでみたいとの声を頂いたので挑みましたが絶対間違った、って気がします。だ、駄目だった・・・。私に書ける長さはここまでが最大限です。すみません。

鉢雷はどんな方法でも幸せにしたやりたくて仕方ないんですが、私は不幸な話しか書けない病
なので室町で挟んで無理矢理ハッピーエンドにしました。は、ハッピーエンドです。

手術とかクローンとか嘘っぱち描写なので、パラレル世界はなんかそういうファンシーなワールドだということでひとつ。

PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする:

Copyright © No Mercy for mobile : All rights reserved

「No Mercy for mobile」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]