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ベイビー/頭の中は鬼畜外道な雷蔵。雷鉢なようで鉢雷

▼ベイビー



 
 後輩がよく小銭儲けに子守をしている。その子守の赤子を一度抱かせて貰ったことがある。赤子は誰とも知らない人間の手の中で良く眠った。
  あんな無防備な顔と同じ感じに三郎が僕の手の中で寝ている。いや、まだ完全に眠りに落ちては居ない。重たそうに瞼を閉じては開き鼻先を僕の首筋に埋めている。 
 眠たい筈だ。三郎は三日くらい、あるいはもっと長い間寝ていない。それは僕がここ三日学園を離れる使いに出ていたからである。
 三郎は僕が居ないところで眠らない。

「それじゃ何かと不都合があるだろう」

 僕の言葉に、そのまま久方ぶりの安眠に落ちていく筈だった三郎はぴくりと睫を震わせて顔を上げた。思わず呟いた一言が三郎の眠りを邪魔したらしい、拙いので誤魔化すように三郎の頭を抱いた。ふたつ並べて敷いた布団の中で擦り寄ってくる三郎の背をぽんぽんと優しく叩いてそのまま寝かしてしまおうと思った。
 けれど、嗚呼しまった。どうやら寝た子を起こした。

「それはこの先の話だろう、雷蔵。」

もう眠たくて仕方の無い三郎の声が掠れている。赤子が愚図る様な、けれど格段に色っぽい声で。殆ど眠ったみたいに瞼を落としているくせにさっきの独り言は聞き流せないらしい。

「雷蔵は…冷たい」

 三郎の不眠症は僕が居れば治る。不都合があるとすればそれは僕が三郎の側から居なくなってしまう時である。だから三郎は責める様な目で僕を見ている。でもきっと黙って笑ったまま三郎の背中をこうして叩き続けていればこの男は安心して眠ってしまう。朝目覚めた時に僕が姿を消していたらどうなるだろう。

 三郎は不眠症である。一年生の頃からそうだった。布団の中で手を繋いでやらないと眠れなかった。余程親に甘やかされたのだろう、と幼い僕はからかった。けれど実際は全く反対で三郎はまだ歩けもしない内に柿の木の下に捨てられたのだそうだ。母親の乳房に顔を埋めて安心しきって眠って、目覚めたら木の下でひとり小汚い布に包まれていたらしい。
 そこからどう生きてきたかは聞いていない。赤子の記憶がどれ程確かなものかも知れない。けれど三郎はすっかり眠るということが怖くなってしまったらしい。三郎はずっと不眠症だ。

 眠れないんだ。

闇夜に小さく泣くような三郎の声を聞いた日から僕は三郎が愛しい。
幼い日の三郎の手を握って眠りながら真夜中に寝ぼけた振りをしてその手を離した。寝返りを打って背を向けた。眠りの浅い三郎はすぐに目を覚まして必死に僕の背にしがみ付く。

 僕は段々それが快楽になってしまって、誰もが羨む天才を凡人たるこの僕が赤子のように安心させてやることが出来るのも泣くほど不安がらせてやれることにも興奮してしまって仕方がない。残酷なようで、凡そ一般的な人間なんてどこかで優越感を得ることが出来なければ生きていけないからこんなのは正常の範囲内だ。きっと。

 三郎はもう瞼を開いていられないらしくて呼吸が段々ゆっくり深くなっていく。薄く開いた唇に指を添えると三郎はそれを咥えた。指をしゃぶる男は全く無防備で僕のもう片手が三郎の首に触れても安心しきっている。この手で首を絞めたらどうなるだろう。
 決してやりたいわけでは無いけれどそんな妄想には欲情した。

 とろとろと眠りに落ちかかってる男の顔を見ながら僕は頭の中で三郎に酷いことをする。 
殴ったり踏んだり首を絞めたり唾を吐きかけたりする。僕の想像の中では三郎は決して抵抗しない。実際にも多分そうなんだろう。それから床に転がされた三郎は這うみたいにして僕のところにやってきて僕のことを抱きしめてまた鼻先を首筋に埋めて丸くなろうとするだろう。三郎は抱き返して頭を撫でて貰えることを微塵も疑わない。その期待を裏切ることを考えた時、僕の興奮は最高潮で三郎が愛しくて可愛くて堪らなくなる。

 「三郎」

 起こさない程度の囁きで名前を呼んで、僕は三郎をぎゅっと抱きしめて頭を撫でて額に瞼に唇を押し当てる。多分僕の手は今熱いと思う。腕の中の男に酷く欲情しているからだ。だけれどようやく寝付いた子供を起こすのには忍びないから腕の中の身体に身体を擦り付けて三郎の首筋を一つ吸ってそれで仕舞にする。三郎は性の匂いがしない。それもそうだ。三郎は僕の腕の中では母親に縋る赤子だから。


「おやすみ三郎」

何処にも行かないからゆっくり眠たらいい。





某所で見た家畜の豚を哀れむ目で三郎を見る雷蔵という言葉に興奮して書きました。この雷蔵は雷蔵じゃないですね。不破様です。

三郎は雷蔵に母性を求めますが対する雷蔵は縋られることに男としての優越感と性欲を感じます。雷蔵、超男性的な生き物。でも受け。三郎は赤子なので中性です。解説でした。

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