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胸の内1※/1と5は室町、2~4はパラレルワールドです。残酷・性描写有り。


▼胸の内

プロローグ(室町より)

 
 鉢屋三郎は不破雷蔵に対してある使命を持って生まれてきたのである。

というのは三郎の言い分であった。ある使命を持ってきた。それは直感だとか、予感だとか、宇宙から送られる指令だとか、その手の根拠の無い感覚なのだがとにかく三郎にはそういう感覚が確かにあったのである。
 それが何かとはしかと三郎には分からないのだが、取り合えず雷蔵の顔を真似て、声を真似て、仕草を真似て、癖を覚え、そして雷蔵のまわりをうろうろ纏わりついた。
 三郎の使命はそうすることで果たされるような、しかし足りていないような、そういった煮え切らない状態であったので三郎は焦燥に駆られて殊更雷蔵に付きまとった。

「本当に喧しいね、お前は」

 雷蔵がある日呆れたように笑って言った。
三郎は机に向かって本を開いている雷蔵の周りを歩き回ったり隣に腰掛けてみたりまた立ち上がってみた挙句、今は雷蔵の後ろに雷蔵を包むように座ってその腰を抱いている。

「だって」

 子供のような口答えの仕方で口を開いた三郎は、上手く言葉を続けられず眉を下げて口を閉ざした。
うん、と頷いた雷蔵は三郎の言葉を待っている。
しかし自分でも何と分からぬ目的を果たすためにこうしていると、雷蔵にどう説明していいものか三郎には分からない。
 雷蔵は三郎が話し始めるのを待っている。三郎は自分でも何がしたいのか良く考え考えしながら口を開いた。
するといつもの直感だとか予感は唐突に三郎の脳内に降って来るのだった。

そうだ、私は雷蔵に何かを渡そうとしているのだった。

三郎はそう思い至って雷蔵にそれを伝えた。


「私は君に渡さねばならないものがあるんだ」
「…なんだい?」

雷蔵は三郎がこんなに纏わり付いてまで渡しあぐねているものは何かと、興味深々にその手を差し出した。三郎はその手を見つめて困った顔をした。三郎の渡さねばならない使命はその手にことん、と置けるものではないのだ。

「そういうものではないんだ。」

三郎はすまなそうに言った。三郎の渡さねばならないものが何なのか、三郎にも分からないのだがそれのある場所は三郎は良く心得ていた。

三郎は己の胸を叩いた。




1、「僕」





長いものを書いてみようという挑戦。
次から室町とは違うパラレル世界の鉢雷の話です。5話目で室町の続きに繋がります。
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