忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

秘密/好き合う前。同じ部屋になったばかりの鉢雷


▼秘密


 変装及びその他の術に関しても天才と名高い鉢屋三郎は、神出鬼没で変幻自在、おまけに素顔は誰も見たことがない。と、くれば大概の人間の好奇心は三郎に向く。

 五年に上がってその鉢屋三郎と同室を共有することになった不破雷蔵は、やはり噂の人物に興味はあれど、心の優しい性格なので不用意に彼の秘密を覗き見ないよう気を配っていた。三郎の素顔は誰も見たことがないという。それはつまりそれだけ三郎がそれをひた隠しにしてきたということである。同室に住む雷蔵までそれを暴こうとしたら心の休まる場所のない三郎があまりに可哀想だと雷蔵には思われたのである。

ところが当の三郎はと言えば雷蔵への興味を隠そうともしないのである。

 二人の部屋はちょうど真ん中に衝立がひとつ置かれていて、雷蔵は就寝時や着替えなど三郎が変装を解かなければいけないような間、決してその向こうを覗いたりはしない。それは雷蔵が自分の好奇心を抑え抑えのことだったので、あるとき着替えの最中に雷蔵がふと振り返り、衝立の上から頭を出してこちらを覗いていた三郎を見つけたときには雷蔵は酷く腹を立てたのだった。


「卑怯じゃないか!」


顔を真っ赤にして三郎の方に向かってくる雷蔵は下帯と前掛け姿に上衣の袖を片方通したばかりという状態であったので三郎は却って喜んで口笛を鳴らした。

「この…っ、…馬鹿!」
 
雷蔵は衝立越しに三郎の着物の襟を締め上げて揺さぶるのだけれど三郎は雷蔵の真っ赤な顔と袴を着けていない白い太股へと視線を行ったり来たりさせるのに忙しい。

「卑怯って?」
「僕はお前のことを覗いたりしない様に気を遣っているのに」
「ふぅん」

三郎はやんわり雷蔵の手を外させて自分の袴の帯の端を指先で摘む。ゆっくりとした動きで帯を解いていく変装名人は、同室になって以来大体雷蔵の顔を借りていて、今も雷蔵の顔で色目を使う。袴がすとん、と床に落ちた。雷蔵は悲鳴を上げてしまう。幾ら身体つきは他人だって自分の顔のストリップショーは見たくない。

「ぎゃあっ」
「私の裸が見たいなら見ればいいじゃないか」


三郎は頭の後ろに手を回して髪を掻きあげてしなを作る。上衣の肩を落として全部脱いでしまいそうだったので雷蔵はしきりに首を振った。

「そうじゃない!僕が衝立を覗かないのはお前の秘密を見ないように…」
「秘密?いっぱいあるよ。何が知りたいの?裸を見たお詫びに教えてあげよう」

三郎にそう囁かれて雷蔵の怒りを好奇心が塗りつぶした。途端、雷蔵は丸い目をぱちりと瞬いて、いいのかい?なんて囁き返す。三郎はそんな様子を微笑ましく思うらしくって目を細めて口の端を上げる。雷蔵の頬は今度は興奮でほんのり赤い。

「じゃあ、お前の一番の秘密を教えてよ」
「…いいだろう」

少し難しい顔をして眉を上げた三郎はおいでおいでと雷蔵を衝立の自分側に招き寄せた。ふらふらやってくる雷蔵の大きな目は期待できらきら輝いていて心臓はとくとくと弾んでいる。ごくんと喉を鳴らすのが素直で可愛らしい。

「いいかい?」

ぐっと三郎の顔が寄ったのでそれに合わせて雷蔵が顔を寄せた瞬間のことである。


私は君が好きなんだ、
囁く言葉があって雷蔵は三郎に口を吸われていた。

訳の分からないでいる間に雷蔵は舌で口内を存分に犯されて唇を緩く食まれて押し倒されて三郎を上に乗せている。見上げれば三郎は秘密を明かしてもらうときの雷蔵よりずっときらきらした目で雷蔵を押さえつけて舌なめずりしているのだ。


「さあ、秘密を知ったからにはただじゃ済まない」

降りてきた唇に雷蔵はまた卑怯だと叫び返した。







馴れ初め?とか告白は初めて書きました…
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする:

Copyright © No Mercy for mobile : All rights reserved

「No Mercy for mobile」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]