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狐憑きの魔法/(現パロ)雷蔵に会いに来る得体の知れない何か


▼狐憑きの魔法


 物心付いたときから顔の夢ばかり見ている。
真っ暗な不思議な空間の中で男がひとり立っていて、その男の顔が次々とすげ代わっていく夢だ。

次々に変わる顔は男だったり女だったり狐だったり大仏だったりもする。

それがただ永遠繰り返されて僕は目を覚ます。
目を覚ましてそれで終わりである。


ところが今日、僕は唐突にそれがなんの夢なのかを理解した。

「雷蔵!」

街中で突然声をかけてくる男が居た。

雷蔵雷蔵会いたかったよ雷蔵。

男はそう言いながら僕に近づいてきた。
男の顔は少し僕に似ている気がした。
いや、相当似ているのかも知れなかったがただなんとなく田舎くさいというか、古くさい雰囲気なのと長い髪を頭の上でひとくくりにしているのがが違っている。
僕は何故か昔見た祖父の写真を思い出したけれど、それとも似ているけどそっくり同じではやはりなかった。

男はひとしきり、雷蔵雷蔵と喚いたあと、顔立ちが少し変わったねと言って自分の顔をひと撫でした。

すると目の前には僕が立っていた。

男が僕そっくりに化けたのだ。

「髪も短い」


そう言って男は自分の髪をバサリと切り落とした。
適当に切り落としたように見えたのに男の髪は僕とそっくり同じになった。

僕は目を丸くして男をみた。

「長生きしてみるもんだなぁ。やっと会えた。あ、竹谷と久々知は?もう会った?」

男が見知らぬ名前を出す度に男の顔は様々に変わった。
僕は生まれてからこのかたずっとこいつの夢を見ていたんだとここで気が付いた。

男はやがて黙って僕をまじまじと見て、

「もしかして、私のこと忘れちゃったのか。雷蔵」

そう言った。

僕はそこでやっと、僕は雷蔵なんて名前ではないよ。と正そうと気が付いた。

「誰のことか知らないけど、僕の名前は」

ぱちん。

そこで男が僕の顔の前で自分の両の手を叩いた。

僕は思わず目をつむり、そして目を開き、言った。

「わ、びっくりするじゃないか。三郎。」

「だって雷蔵が私のこと忘れているんだもの」

三郎は少し拗ねたように言った。1000年近くも待ったのに!などと呟いているからごめんごめんなんて適当にあしらってやる。

やがて気が済んだらしい三郎がふと気付いて僕に問うた。

「ところでさっき何て名乗ろうとしたんだい?」

僕は少し考えたけど、考えるだけ無駄なことだった。

「分からないなぁ。だって僕は雷蔵だもの」






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