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実はね…/実は三郎が人外


▼実はね


僕たちは自分が覚悟していたよりも存外長く生きた。
だからすっかり年をとっておじいさんになるまで生きた僕に三郎はあることを隠しておけなくなった。

「こんな時になんだけれど、これで最後になると思うからだからどうしても言っておきたいことがあるんだよ。」


神妙な面持ちで三郎が口にした。
さて僕はと言えば日の差し込む暖かな部屋で柔らかな布団に包まれて三郎に看取られてまさに最良の最期を老衰で迎える瞬間であった。

「私はね、実は…私は学園の裏の山の祠に祭られている魍魎でね、人によっては神様だなんて呼んでくれたりもするけど…
覚えているだろうか、雷蔵。初めて君にあった日、君は大人に手を引かれて私の森へやってきた。
そして大人がやがて君を置いて何処かへ消えてしまっても君は泣きもせず…私はアレは子捨てだと思ったわけなんだが…まぁ、森の中を歩いて学園に向かっていた。
途中君は私に、というか私の社に饅頭を半分くれたね。
そのお礼に、一人は心細かろうという気持ちで、本当に軽い冗談のつもりで私は他人の顔を借りて人の姿で君と一緒に学園に入学したわけなんだが。
 つまり私は人間の顔がないんだ。元々持っていないんだよ。魍魎だからね。だから最期だと言うのに君が見たがっていた私の顔をいうものをみせることが出来ない。ごめんね。雷蔵」


なんだそんなことをと僕は思って笑った。
僕はすっかり年をとったけど三郎はいつまでも14,5の子供の形でいるからいくら変装の名人でもなんでもおかしいとは思っていたのだ。

それにずっと忘れていたけど最近僕は思い出していたんだ。

「そうだ、そうだ。初めて会った日、三郎は確かに『私は山の神様なんだよ』って言ったんだっけ。」


本当だったんだねぇ。そう言って僕は三郎に笑いかけてそれが最期の台詞になったのでした…





「……と、いう夢をみたんだけど、三郎まさかあの日君が言ってた『私は山の神様なんだよ』っていうのはひょっとしたら…?」

「…うーん、いや、雷蔵は時々突拍子もないなぁ。」
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