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真似真似/雷蔵の片恋ごっこ


▼真似真似


 「馬鹿にして!!」

そうやって雷蔵が声を荒げたので三郎は吃驚して立ち尽くしてしまった。
雷蔵はとても穏やかな気性なのでそんな風に人を怒鳴りつけるのは珍しく、そして怒鳴られる対象が自分だというのに至っては始めてのことであったので三郎はえらくうろたえた。


「ら、らいぞう?雷蔵…ごめんごめん、雷蔵許してくれ」


三郎は何故雷蔵が突然に怒り出したのか全く分からなかったけど平謝りに謝り始めた。
雷蔵はきつく眉を寄せて唇を引き結んで三郎を睨みつけていたが、今度はその唇が微かに震え始めて大きな目がじわりと歪んだ。

「わ、ああっ、雷蔵雷蔵ごめんって!雷蔵泣かないでごめんごめんごめんなさい!!」

三郎はいよいよ狼狽した。
雷蔵が怒ったり泣いたりするなんてとても珍しいことである。

「雷蔵ー…」

いっそこちらも泣き出しそうな形相で三郎が雷蔵に手を伸ばすとばしんっと大きな音がして勢いよく手が払われた。三郎が目を見張ると今度は握り締めた拳が顔面に飛んできたので三郎は大慌てで避けた。

「そうやって…馬鹿にして!」

雷蔵は泣きはらした眼で叫んだので三郎は一瞬動きが止まって、次いでやってきた拳を避けられずに顎に受けてもんどりうって倒れこんだ。

「ぎゃあっ!」

短く悲鳴を上げた三郎の上に雷蔵が圧し掛かってきたので三郎の頭は色んな意味でパニックになった。

「真似ばっかして…馬鹿にしてー…!」

雷蔵はしゃくりを上げながら鼻声で三郎の胸倉を締め上げている。
締め上げられながら三郎は指先で一生懸命に雷蔵の涙でぐしょぐしょの頬を拭っているという妙な図が構築されている。

「雷蔵違う。馬鹿にしてるんじゃない。私が君の格好をするのは君が大好きだからだよ」

三郎が必死で宥めようとすると雷蔵はうーだとか、あーだとか呻いて丸い目から涙をぽろぽろ零すのでとうとう三郎もわーっと声を上げながら泣き始めた。

すると真似すんな!と怒声が飛ぶ。

「何が大好きだ。真似すんな!僕がお前のこと大好きなの知っててお前を好きな僕の真似してるんだろう!!馬鹿にして馬鹿にしてッ…!」


わぁぁっとそこからは言葉にならない声を出して泣き始めた雷蔵を三郎は目を丸くして見て、それからがばっと腹筋を使って起き上がってぎゅうぎゅうと雷蔵を抱きしめた。

「雷蔵雷蔵大好き!すげー嬉しいんだけど俺!わぁー大好き!」

ぽかぽかと背中やら頭やら殴られながら三郎は声を上げて笑って雷蔵は喚きつかれて腹が減るまでずっと三郎にへばりついていた






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