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哀想な男/いじけてみせる三郎とあしらう雷蔵


▽可哀想な男



 

三郎は時折わざと拗ねたり落ち込んだりしてみせる。
雷蔵の膝にごろんと勝手に頭を乗せてきてわざとらしく溜息をついたりする。
雷蔵がそれを無視していると三郎は雷蔵の腰に手を回して腹に顔を擦りつけたりする。


「雷蔵、私は落ち込んでしまったよ。可哀想がってくれ。」

雷蔵はそんな台詞が嫌いなのである。
べったりと張り付いて離れない三郎の頭に手を置いてぐっと引き離そうとする。三郎は無言で益々雷蔵の腰を抱く力を強めたりする。全く図々しいったらありゃしない。雷蔵は三郎の頭をぺしっと緩く叩いて、それっきり三郎を膝の上から落とすのを諦めた。


「僕がお前の何を可哀想がれというんだい?」


雷蔵は眉の間に皺なんか寄せて不機嫌である。
なんでもいいから私は可哀想なんだ、と三郎はよく分からないことを言って雷蔵に懐いている。雷蔵は溜息を吐いた。
雷蔵は三郎のこういう台詞が大嫌いだ。

 三郎は実技も教科も雷蔵より全然良く出来るし、勉強以外になにをやらせたって雷蔵より器用にこなすのだ。
三郎にはそもそもそつというものが無くて、立ち居振る舞いは綺麗だし、飯の食い方ひとつだって綺麗だ。
雷蔵は三郎に何一つ敵いやしないのに、三郎はそんな自分を可哀想がれなんて言う。みじめな気になって悔しいから雷蔵はそんなことを言う三郎が大っ嫌いなのだ。


「可哀想、三郎」



雷蔵は無感情に呟いた。うんうん、と三郎が甘えてくるのを殴りたくなってしまう。


「可哀想、三郎。僕に嫌われて。」


雷蔵が意地の悪いつもりでそういうと三郎は泣きそうな顔をするので雷蔵はそこでちょっと機嫌を直した。
三郎の頭を今度はよしよしと撫でてやってにこりと笑った。

「ざまあみろ」
 


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