忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

スパイダー 鉢雷


▼スパイダー

 

  日の暮れた山道を雷蔵が歩いていると折り重なった枝の中から何かがざざざ、と降ってきた。

 降ってきた何かから咄嗟に身を庇って雷蔵が後ずさったところ、ぱちんと何か弾ける音がして雷蔵の足首は縄に取られて逆さに釣り上げられてしまった。
何か罠が仕掛けてあったのだろうなぁ、と天地の引っくり返った辺りを眺めると目の前には木の枝からぶら下がっている案山子がぺろりと舌を出して揺れている。
先ほど上から落ちてきたのはこれらしい。

してやられたなぁと雷蔵が思いながら懐から刃物を探っているとまた枝が揺れて今度は男が落ちてきた。
男は忍装束に身を包んでいてよく見えなかったが、とりあえず雷蔵には見覚えのない顔だった。

 男は枝から降るなり何か布のようなもので雷蔵の鼻と口を塞いだ。呼吸を邪魔されて雷蔵はもがいたがそのうち身体が動かなくなって腕も持ち上がらなくなったことに驚いた。
 布に染み込ませて何か嗅がされたと気づいたが世の中には色々な毒があったものらしい。
男は雷蔵が動かなくなると足を吊り上げていた縄を切って、雷蔵の身体を地面に横たえた。

そしてまた縄を出してきて足首と手首をそれぞれ括ってしまうと雷蔵を抱えて夜の山道を走りだした。


「…何処に行くんだい?」


担がれながら雷蔵は尋ねた。

身体の自由を奪う薬は意識までは犯しはしないらしい。男は答えないで走り続けている。重たくはないのだろうか、と雷蔵は余計な心配をした。男は覆面をずらして雷蔵を見た。やっぱり見覚えのない顔だったがその口元は楽しげに笑っている。
雷蔵は少しむっとした。


「ねぇ、そんな知らない顔をしても分かっているんだよ」


三郎、と雷蔵が呼びかけると目を細めて笑った。


「ばれたか」


悪戯っぽく声をたてて笑った三郎は、人攫いごっこだよと言ってのけて雷蔵の見知らぬ顔で雷蔵の頬にキスをした。



------------------------------------------------------------------------------------
可愛い君を捕まえた
(スピ○ツ「スパイダー」)
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする:

Copyright © No Mercy for mobile : All rights reserved

「No Mercy for mobile」に掲載されている文章・画像・その他すべての無断転載・無断掲載を禁止します。

TemplateDesign by KARMA7
忍者ブログ [PR]