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学校に向かう僕の制服のポケットには一万円札がいっぱい入っている。正確に数えてないからいっぱいとしか言いようがないけど、兎に角、学生の僕には大金だ。
僕はコンビニに寄って昼休みに食べるパンとお茶を買って、ポケットの一万円を出した。学校の購買では僕はいつも昼ご飯を買い逃す。
コンビニの袋と学校の鞄をぶら下げて、僕のポケットにはいっぱいの一万円札とくしゃくしゃの千円札とレシートと小銭が入っている。手持ちを減らしたはずなのに面積はかえって増えてしまった。
僕はポケットの中身を持て余す。
「留三郎、お金困ってない?」
昼休み、コンビニのパンを生ぬるくなってしまったお茶で流し込みつつ僕は聞いた。
「別に。・・・なんだ?今月やばいのか。貸そうか。」
留三郎は、いいやつだ。ガソスタのバイトでこつこつ稼いだ、でもあまり財布に残ってない緑っぽいお札を無造作に僕に差し出す。
僕は慌ててそれを突き返した。ポケットでちゃりっと小銭が鳴った。なんとなく後ろめたい。
「違うんだ、留三郎。これ。」
僕がポケットの中身を鷲掴んで留三郎に押しつけたら留三郎は目を丸くしていた。バラバラの紙幣を整えて一、二、と数えていく。
「9万。」
「貰ったんだ」
一枚はコンビニで使ってしまったからじゃあ、元々十万あったんだ、と僕は思った。留三郎がひきつった顔で僕を見ている。
「電車で、変なおじさんが・・・ああ、変なって言っても見た目だけで、話し方とかは普通で・・・ええ、と」
学校に向かうため、毎日僕は電車に乗る。ある日電車には妙な風貌の男が居て、僕はそれと目があった。
木乃伊男だと僕は思った。
顔中ぐるぐる包帯だらけだった。そういう人をあまりじろじろ見るのは失礼だと思ったから僕は目を逸らした。そうしたら木乃伊男はにっこり笑ってこちらに近づいてくるのだ。
「で、お金をくれた」
「危なくねえか、それ・・・?」
確かに言葉で説明してみたらその場で思ったよりずっと怪しくて胡散臭げだ。留三郎は声をひそめてそっと僕の両肩に手を置いた。
「代わりに何かされたとか、させられたとかは」
「ちょっと、僕が何されるって言うんだよ」
留三郎は言葉を詰まらせてもごもごと呟いた後、頬に血の気を上らせた。何を考えているのか知らない。
木乃伊男はなにも要求しなかった。
僕はただとても気まずくて、男の包帯だらけの顔に「おだいじに」って呟いただけだ。そうしたら男は僕のポケットにいっぱいお金を詰め込んだ。
普通に嬉しかったのかもしれないし、もしかしたら僕の言葉にイメクラ的な何かを得たのかもしれない。
「捨てた方がいいと思う?」
留三郎は少し難しい顔をしていたけれど、結局分からないといってこちらに札束を返した。
君にあげると言ったら、断られてしまった。
実は、木乃伊男には明日もおいでと声をかけられているのだ。僕はポケットの中の一万円札と明日もくれるかもしれないお金のことをちょっと考えた。
帰ったら、ネットで通販サイトなんかを調べてみよう。ずっと欲しかったドイツ製の骨格標本のでかいやつが手にはいるかもしれない。
…またちょっとお題からずれました
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