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『舌があればなぁ、と思うのですよ』
「それじゃあ、コーちゃん。僕ら町に出かけてくるけどおみやげは何が良い?」
伊作はお気に入りのピンクの小袖を身につけて上機嫌である。鼻歌なぞ歌いながら出掛け仕度を整え、ふと、コーちゃんと名づけたやはりこれもお気に入りの骨格標本に振り向いて言う。
「何か欲しいものはあるかな。」
『この身に舌があればなぁ、と思うのですよ』
伊作は骨格標本に墨色の忍び装束など着せているのだが、その肩を優しく撫でながら感慨深げに溜息を吐いた。
「この装束も首がくたびれてきたねェ。新しい服を買おうか。…ねぇ、留三郎。女の子に送るようなうんと可愛い着物をコーちゃんに着せたらどうだろう。布を買ってみやげに出来るだろう?」
『本当は柔らかな皮膚などあればとも思ったのですが、あなたは骨のこの見た目が好きなようですし。舌ならば口の中に隠してしまっておくことが出来るでしょう。』
留三郎はちょっと眉を顰めて考えるように骨格標本の姿を見上げて、首を傾げる。
「その布を着物に仕立てるのは俺なんだろ?…つか、コーちゃんって女なのか?」
「嫌だな、留三郎。コーちゃんは骨格標本であり男でも女でもないよ。」
留三郎は何となく得心がいかない様だったが、じゃあなんでもいいんじゃないか、と適当に言葉を返した。
「夏だしな。浴衣ぐらいなら簡単に縫ってやるよ。」
「ふふふ、さすが留三郎。反物屋を覗くのが楽しみだなぁ。」
伊作と留三郎は墨色の装束を着た骨格標本を見上げては、何色が似合うかなァなどと相談を始めたりする。留三郎なんか女装用の自分の着物を出してきて骨格標本の肩に合わせては似合いの色を探している。
「ピンクがいいんじゃないかなぁ。桜とか梅の柄が可愛いよ。」
『舌があれば良かった。舌があればどんなにか人間味の増したことでしょう。接吻もずっと色気が増すし、優しい言葉も囁けたものを。舌があればよかったなぁと思うのですよ。』
「お前はなにかっていうと桃色じゃねぇか。風情が無い。…紫陽花なんかどうだ?」
やがて伊作と留三郎はあれだこれだと意見を交わしながら連れ立って町へ出かけていくのだった。
楽しげな笑い声を骨格標本は黙って見送った。
『ねぇ私、舌があれば良かった!』
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