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(39)コスプレ(食満伊)/僧コスに萌える留三郎



 「お前のそのコスプレだけどさ、」


と、留三郎が言うので伊作は不機嫌そうに留三郎を上目に睨んだ。


「コスプレじゃない。変装。」


 むっと唇を突き出した伊作は袈裟掛けの僧体姿である。学園のテストの一種で遣いに出ていた筈の伊作は何故か妙な荒れ屋の柱などに立ったまま縛り付けられている。


「僧体は七方出という変装レパートリーの中のひとつで、敵の目を欺き目立たず忍務を遂行する為の立派な変装・・・」
「それが目立ってんだよ」


 留三郎はこきっと首を鳴らして辺りを見下ろした。この辺りでは珍しくもない野党の2、3人が倒れている。殴ったり蹴ったり関節をキメたりして成敗してくれた男共の身体を留三郎はわざわざ一度踏んで伊作の方へ歩いてきた。


「つかエロいんだ、お前は。」

 留三郎はジロジロと伊作を上から下まで眺めては眉を顰めている。頭髪をきっちりと仕舞いこんでいた手拭は解けて伊作の髪はばらばらに広がっている。真っ黒い着物の袷は引っ張られて白い肩が半分むき出しになっている。道中、強姦をを目的に伊作は山賊などに目を付けられてこんな荒れ屋に連れ込まれてしまったのだった。
 それというのもまぁ伊作が悪いと留三郎は言う。

「こんな若くて小綺麗で女みたいな顔した坊主がきっちり襟元閉めて傘被って歩いてたらそりゃ脱がすだろうよ。」
「意味分からないんだけど」


伊作はまだ柱に縛り付けられているのでじたばたと身を捩ってみたのだけれども、留三郎は伊作を見渡してはぶつぶつ小言を言うばかりで縄を解いてくれる気配がさっぱり無い。


「大体、僧体ってのがいけねぇよ。こう…俗世と無縁です的な澄ました感じがムラムラするっつーか、犯したい的な欲望を刺激するっつーか、」


留三郎が不意にしゃがんで伊作の着物の裾をぺらりと捲り上げたので伊作は悲鳴を上げた。

「ぎゃあっ」
「…この白い脚半が特にエロいな」


 伊作は変な風に赤くなってじたばたと足を暴れさせるので捲くれ上った裾から更に白い太腿など見えそうにちらつくのである。留三郎はすっと目を細めて抓んだ着物の裾をゆっくりと持ち上げていったりする。


「ちょ、ちょっと、馬鹿!やめてよ!」
「あ?馬鹿とはなんだ。助けてやったのに。」


 着物の裾を離して留三郎は立ち上がると伊作の額に自分の額をごつんとぶつける。大して強くぶつけていないのに伊作は涙目になった。それが大層可愛らしいので留三郎は複雑そうに眉を顰めた。

「お前、俺が付いてたからいいものの…」
「うう、全然良くないよ。留三郎、テストの監視係だもの。」

 伊作が恨みがましく呻く。
与えられた忍務を果たしてくるのが伊作の試験なら、その首尾を逐一観察しては報告するのが留三郎の試験だったりする。


「ああ、もちろん報告するからな。善法寺伊作、賊の手に落ちる。」
「ええー、やだ!」

 伊作はぎゅっと眉を寄せて唇を尖らせて文句を言うので留三郎はその唇を掠めるようにさっと接吻した。それというのも伊作の様子が大層愛らしかったのがいけない。それから僧体姿が留三郎のやましい気分を揺さぶるのもよくなかった。ジタバタ暴れて見え隠れしていた伊作の白い太腿が留三郎の瞼の裏にちらちらしてるのも大層良くない。


「…今ここでちょっとヤらせてくれたら黙っててもいいんだけどよ」
「それ、僕も言いつけるから。食満留三郎、色に溺れて忍務放棄。」


 多分、すごく減点なんじゃないかなぁ。
と伊作が首を傾げるので留三郎はちっと舌打ちしてようやく柱に縛り付けられている伊作の縄を解いてやった。


「あー、畜生。勿体ねェ。」
「まだ言うの…」


だってよ、と留三郎は拗ねて見せながら、ちゃっかり伊作の腰を抱き寄せている。


「お前、今すげぇ可愛いんだけど。」


伊作は途端に咳き込んで留三郎の背中をやたらに殴ったりするのだった。


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