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「鞭打ち100回だって。何したんだい?」
雷蔵は持たされた木製の笞杖で自分の手のひらをひた、と打って眉を顰めた。
「結構痛いよ?」
目線をやると三郎はにた、と笑う。学園の敷地の隅の隅に薄暗い小屋があって、それは折檻部屋らしい。そんな場所があるのを雷蔵は今まで知らなかった。上半身裸の三郎は腕を棒の両端に括りつけられてそれを天井の梁から吊るされている。これはまるで罪人だ。雷蔵がいぶかしむ目をする。
「それで済むならあのじいさんも結構優しいな」
三郎は学園長のことを指してそんな風に言う。雷蔵は手の内の木杖を持て余したように床を叩く。ひゅうっ、と風を切る音がなってぱしん、と床が鳴る。
「怖いからそんな風に目の前で振り回さないでくれよ」
「あ、ごめん」
雷蔵は慌てて腕を止めて、それからそっと三郎に尋ねる。
「ねぇ、本当に僕がお前を叩かないといけないのかい?」
「…まぁ、どうせどこかに誰か見張り役もいるだろうから」
何か悪さをしたらしい三郎に与えられた罰則は鞭打ち百回だそうで、その身体を叩く役を直接言いつけられたから雷蔵は眼を丸くしてしまった。それに三郎は仕様の無い悪戯ばかりしているけど、こんな風に処罰を食らうのを雷蔵は今までみたことがない。
「どうして僕が、って聞いたら先生はそれはお前を殴って聞き出せってさ。どうしてだい、三郎。」
「…それは言えないよ。私は君に百回以上殴られたくない」
ひゅ、と脇腹にいきなり鞭の一撃が飛んできたので三郎は息を詰めた。
「あうっ…雷蔵、始めるなら言ってくれよ」
「ごめん。今のは衝動的に手が出た。」
介抱してやるから勘弁しろよ、と言って雷蔵は三郎の肌を打ち据える。叩かれた箇所がくっきり赤く腫れるのが目立つので雷蔵は三郎の肌が案外白かったことに気づいたりした。一応少しでもマシなようにあまり同じ箇所は打たないようにして痛みを分散させようとは試みる。三郎は殆ど声を出さない。
ところで体罰のわけを三郎が話さないので雷蔵は気になっていることがある。
「疑うわけじゃないけど、僕がこんなことをしなきゃいけないのは、僕に顔向けできないようなことをしたからじゃないかい?」
幾度目かの鞭を振り下ろして雷蔵が訊ねた。
三郎は黙って何も言わないのがなんだか不穏だ。びゅっと勢い良く鞭を振り落とす。まだ真っ白いままだった薄い胸を叩いた。
「い゛っ…!!」
「感じるところってすごい痛いらしいよ」
身体を反り返らせた三郎の臍の辺りをまた鋭くぱしっと叩く。短く息を吐き出して喘いだ三郎の目の淵には生理的な涙が浮かんでいる。三郎は首を横に振って返答を拒否した。雷蔵には気になっていることがある。
「僕の村が焼けたんだ」
唐突に雷蔵が言った。三郎の頬の筋肉がぴく、と反応したのを雷蔵は見てとった。見過ごせない反応だった。
「君は学園の所有する機密を盗み見たと学園長先生はおっしゃるのだけど、例えば在籍する生徒の情報や出生なんかも、学園所有の情報と言えなくもない。…でもまさかね、」
雷蔵が振り回した鞭が三郎の右頬を打ったので三郎は悲鳴を上げた。作り物の顔が破れて素肌の頬が少し覗く。
「…顔は、…顔はやめてくれよ…」
「三郎。君は何をしたんだい?」
三郎は取り繕うように笑って見せようとして、諦めた。
「君が卒業後は村に帰るつもりだと言うから、そんな村は」
ばしっと酷い音がした。
続きを聞きたくなかった雷蔵は三郎の耳を打って、肩を打って、脇を打った。平たい胸を同じ箇所を幾度も叩いた。三郎の身体が跳ねる。
「あ゛っ…ああ、ああッ……!!」
此方が泣きたくなるような悲鳴だ。膝からがく、と崩れ落ちた三郎の身体を天井から吊るす縄が許さない。雷蔵は誰かを拷問するのは初めてだ。嫌な気分なのに髪を乱して首を項垂れている三郎にどうしてか欲情したのが分からない。喉が渇いた。
「何か言うことは?」
「…雷蔵、君が好きだ。」
ばしっと鞭が響いた。
「知っているよ、そんなことは!」
雷蔵はもう三郎の身体の目に付く範囲をひたすら滅茶苦茶に打ち据えている。皮膚が裂けて血が滲んでいる。
「だから許すよ。」
雷蔵は鞭を放り投げて顔を覆った。雷蔵にはもう帰るところがないのだけれど、三郎が憎くないのが自分で許せない気がした。
「ごめん、二百回程叩いた。痛かったね。」
三郎は、数えてたから知ってる、と言って目を細めた。
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