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(42)騎乗位/※伊作の襲い受け 雑伊


 愛していようがいまいが、気に留めないのだと献身ぶる男の言葉が重く苦しい。
伊作は男を愛しているから気に止められなくては困ってしまうのだ。着物を捨てて裸になった伊作が男の上に跨ると、雑渡というその男は片方しかない目玉で瞬いて首を振った。

「無理をしないでいいんだよ」

 伊作は形の良い眉をきゅっと寄せて不快そうな顔をする。唇を噛んで頑なな様子で雑渡の着物を剥いでまだ萎えている性器に細い指を絡める。

「無理なんかじゃありません。好きでしてるんです。僕はあなたが好きなんです。」

 拗ねたように桜色の可愛い唇を尖らせて、雑渡を睨みつける伊作の顔は愛らしい。伊作は髪の毛から指先から何だって少女のように優しく柔らかな美しい造形をしている。
ところが雑渡は顔から全身まで焼け爛れた世にも恐ろしい姿をしていて、忍びを生業とするにあたり実際行いだって恐ろしいということを自分で良く分かっている。
そこで雑渡は伊作の言葉を真に受けない。ふ、と緩く笑う。

「嘘ばっかり」


私が恐ろしいのだろう。そして、それで構わない。
と雑渡は言うので伊作は苛々して可愛い顔をどんどん鬼の様に歪めて唇を噛む。切れてしまう、と雑渡が伸ばした指に伊作は噛み付いて、すぐ後悔したように口を離した。

「僕は、僕は雑渡さん、あなたが、すぐそんな風におっしゃるからどうしたら僕の言葉に嘘が無いことを分かっていただけるのか考えたんです。」


伊作はぴりぴり緊張した空気で雑渡に言う。
手淫で勃起させた雑渡の性器を伊作は自ら入り口に宛がって先が埋まるように静かに腰を落した。伊作は歯を食いしばって苦しげに呼吸したけれど、無茶に思えるいきなりの挿入は意外に簡単に果たされる。ふ、ふ、と吐き出す吐息で伊作は笑った。

「…次あなたにお会いしたら僕から身体を繋ごうと決めていました。お待たせするのは悪いから自分で慣らして待っていたんですよ。あなたいついらっしゃるか分からないから、もう毎晩。だからずっとここの所が切なくって大変だった。ねぇ、どうですか。」
「何がだい?」

伊作は興奮に頬を赤く染めて、腰を落しきる。根元まで咥えて伊作は深く溜息を吐き、薄い腹がひくりと震えた。

「こんなことするまであなたのことが好きなんです。分かりますか?」
「さぁ…」


雑渡が首を傾げたので、のぼせた様だった伊作の顔がざぁっと青褪めてしまった。
眉をきつく寄せて目を固く瞑った伊作の背を撫でる雑渡はやはり伊作が信用ならないのである。なぜなら伊作はあまりにも若く健全で美しい。雑渡のように姿の醜い残酷な男を愛す筈が無かった。

伊作はそれを聞いて癇癪を起こしてしまう。
無理に乱暴腰を振ろうとしては悲鳴を殺すので雑渡は慌てて伊作の手を握り腰を押さえたりした。きっ、と厳しい伊作の目が涙を浮かべている。


「雑渡さん、じゃああなた僕がどうしてこんな真似するのだとお思いですか!」
「さぁ、」

雑渡には本当に分からないのである。首を傾げて当てずっぽうに心無い言葉を吐く。


「セックスが好きなんじゃないの」


伊作はぼろっと涙を零して雑渡の手を振り払い、悔しげに腰を揺すった。



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