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久しぶりに身体を交えた後で、雑渡が伊作の裸の肩を抱き寄せて恋人みたいな余韻を楽しんでいると伊作が妙なことを口にした。
「ねえ、女性と僕とのセックスではどちらがいいですか?」
「は?」
雑渡は片方だけの目でぱちと瞬いて伊作を見返した。雑渡の返答を無心に待っている伊作の表情からは質問の意図は伺えない。そうだねぇ、雑渡は何か思い出すように目を細めて思案しているみたいだ。
「同じなんじゃない?」
どちらにしろ身体の器官に性器を突っ込み射精に至る快感を得る、ということには違いないので雑渡はそんな風に答えた。
ところが雑渡の答えに伊作は釈然としない顔をしている。
「僕はそれはおかしいと思うんです。」
「うん」
雑渡は難しい顔をした伊作を見てなにか難しいことを言い出すのだろうなあと考えながら伊作の頭を撫でた。
伊作はたまに突拍子もない問題提起をして、それについて長々と語り出すことがある。
なにがおかしいの、と雑渡が促すと伊作は雑渡の胸に擦り付いてあのですね、と切り出した。
「セックスが気持ちいいのは僕らが子供を成すために本能にそう刻まれているからでしょう。」
うん、そう、と雑渡は適当に相槌を打った。
相槌を打ちながら伊作の解れてしまった前髪を掻き上げたり、手遊びに伊作の首筋を擽ったりしている。
伊作はそれに悩ましげに溜息を吐いたりしながらしゃべり続ける。
「でも僕は子供を産めません。」
「・・・なに、君は私の子供を産みたいの?」
雑渡はいまいち飲み込めないで伊作にそう訊ねたのだが伊作は緩く首を振った。
「つまりです。無理に男の直腸に性器をねじ込むよりも、子を成せる女性器に突っ込んだ方が、本能が満たされて気持ち良い筈なんです」
「ああ、そう」
結局なんだか自分は拒まれているのだろうか。
雑渡はちらりと伊作の腹を見た。伊作の腹の上は伊作自身がまき散らした精液が乾きかけて汚れている。
本能的に何も満たされない性交でも伊作だって気持ちよくないわけでは無かったはずだ、と雑渡が思っていたら伊作はあっさりそれを肯定した。
「だけど僕はこの男の身体で男のあなたを受け入れるセックスが何よりも気持ち良いんです。」
・・・僕は生き物としておかしいんじゃないでしょうか。
と伊作は締めくくったのだが雑渡には結局伊作がなにやらいやらしいことを言っているなぁとしか飲み込めなかったのである。
つまりさあ、
雑渡は一通り話を聞いてそれから伊作の首筋に甘く噛みついた。伊作はひくんと肩を震わせて白い喉を晒す。
「んっ・・・」
「伊作君は、これが気持ち良いんでしょ?」
気持ち良いならもっとしておこうか、
雑渡が楽しげに囁くとそれまで御託を並べていた伊作は迷わず雑渡の首にすがりつくのだった。
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