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「犬と狼」/(凄白) 頭の緩い白目受け さおり様よりリク


▼犬と狼


 もういい加減その面も見飽きた。その台詞も聞き飽きた。

「し、死ぬかと思っ、思いましたよぉ・・・!」

ずっ、と鼻を啜ってべそべそみっともなく泣いている馬鹿が仕事でへまをするのも、俺がその尻を拭うのもいつものことだった。俺は大概自分の仕事をこなして尚、余裕があまりあったので出来の悪い部下の面倒を押しつけられている。要するに貧乏くじだ。
 俺は黙って脇に抱えていた馬鹿の身体を床の上にぶん投げる。戦地の視察に送ったらまんまと敵兵に囲まれて簀巻きにされてたこの阿呆を俺は抱えて城まで帰ってきたので腕がダルいことこの上ない。


「ぎゃんっ」


蹴飛ばされた犬のような悲鳴を上げて転がる馬鹿は泥まみれだったので、俺はこいつを放り込んだ先が自分の部屋だったのを早速後悔した。
床にぱらぱら乾いた土が落ちている。


「うう、俺怪我してるのに・・・」
「ああ、分かってる!・・・面倒くせぇ!」


まだ鼻をぐずつかせている阿呆の顔は転んだんだかなんだか額と鼻の頭が擦り剥けている。
着物を剥ぎ取って裸に剥いてみればところどころ赤くなったり青くなったりしているが、酷い外傷はなさそうだった。あとは骨が折れてなければどうってことはない。あばらの一本一本を手のひらで確かめていくと阿呆がぎゃんぎゃん喚く。まぁここまで元気に暴れていれば大事無いだろう。つか痛ぇな、じたばたする腕に顎を殴られた。苛ついたので骨を確かめるついでに痣の上をちょっと強く圧迫したらきゃん、と子犬の断末魔が響く。

「痛、痛っあ!ああー、うー、死ぬーっ!」
「騒ぐんじゃねぇ、取って食うぞ!」

嗚呼、俺はこの阿呆を相手に何を阿呆なことを言っているんだ。俺が自分の台詞を後悔しているところ、阿呆は途端喚くのをやめてきょとんとして瞬きして首を傾げる。手を伸ばす。指を突っ込んで俺の口の端を広げる。じっと覗き込む。全くの意味不明だった。俺はその手を叩き落す。

「何してんだ」
「え、牙でも生えてるのかと思って…怖い顔してると思ったらあんた本当に鬼かなんかだったんですねぇ。」

頭の痛くなる台詞だがまじまじと顔を覗き込んでくる目は本気だ。本気の馬鹿だ。

「本気で食やしねぇよ。犯すって言ってんだ阿呆。」
「はぁ…成る…は!?え!?」

なんでこんな頭の鈍い餓鬼に俺は欲情しているんだろうか。ああそうだ、盛ってんだよ俺はこれに。
泥だらけで汚ねぇし、五月蝿ぇし、馬鹿だが、小っせぇし色も白いし、額が擦り剥けてようが鼻を啜っていようが顔は悪かねぇから食えないことはないだろ。

思い返せば、いい加減聞き飽きた筈の顔と台詞が既に腰にキてたんだ。

どうせ風呂場で洗ってやろうと思っていたので今更多少汚れても構わなかった。取って食うの言葉どおり首に噛み付いてやると鬼だ獣だと喚かれる。

「ああ、くそ。良いから泣け。」
「ひぃ!」

アレはなかなか色っぽいのでぐしゃぐしゃに泣きながらの死ぬかと思った、をもう一度言わせてやろうと思う。

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