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「僕の肝試し」/(伏雑) 原作設定で伏雑   すい様よりリク


▼僕の肝試し



 スリルがね、好きなんです。
そう言って血の気の無い唇を吊り上げた子供は青白い顔をしてまるで幽霊だ。幽霊みたいな子供にはぁ、と適当に相槌を打ちながら向き合っている男は雑渡昆奈門と言って、これまた爛れた皮膚に包帯ぐるぐる巻きの妖怪かなんかみたいな格好をしている。
 雑渡の姿はそんな風に恐ろしかったもので、真昼の保健室という妙な場所に現れたところ、その場に居た子供たちは一斉に逃げ出したのだ。ただひとり男と面識のあった子供だけその場に残ってすごいスリルー、なんてはしゃいでいた。


「えーと、なんだっけ君?」
「伏木蔵です。伏木蔵。うふ。」

伏木蔵という子供は嬉しそうに含み笑いして雑渡の前にちょんと座っている。

「前に会ったね。ところで伊…」
「善法寺先輩は実習なのでいません。ここで暫くお待ちになりますか。お茶を出しましょうね。僕上手にお茶入れられるんですよ。飲んでいかれますよね。」

はぁ、とまた雑渡は曖昧に相槌を返して伏木蔵を見返した。伏木蔵は抑揚の無い声で滑る様に言い切って急須に湯を注いでいる。足音も無く動く子供だ。良い忍びになりそうだったが些か不気味だった。十の子供にしてはあんまり落ち着いている。

「君は随分肝が据わっているんだね。敵の城の忍びと二人きりで、茶を出すかい?」
「だからね、スリルがすきなんです。はい、こなもんさんお茶が入りましたよ。」

雑渡は目の前に置かれた湯飲みを見て伏木蔵の青白い顔を見てゆっくり瞬きした。

「ちなみに私の名前は昆奈門なんだけどね」
「まぁそれはなんだっていいです。」

伏木蔵は小さな手をひらひら振って茶を勧める。茶に口をつけるには口元を覆う頭巾をずらさないといけないから雑渡は躊躇した。雑渡の顔は酷く爛れていて唇なんかもひび割れて肉が削げているし小さな子供に見せるにはちょっと良くない気がするのである。

「…すりる、ねぇ。肝試しみたいなものかい。」

結局雑渡は湯飲みを取らずに話を逸らした。
伏木蔵は湯飲みを睨んで残念そうだ。


「そうですね…目を瞑って崖の淵まで歩いたり、いっぱい血を流したりすると胸がドキドキするんです。そういう感じです。」
「いっぱい血を、」

雑渡はいやに血の気の薄い青白い子供を覗き込んだ。雑渡と目が合うと伏木蔵はうふふ、と肩を聳やかして笑う。照れているらしいが、兎に角に不気味だ。見てくれだけの話じゃない。

「危ないね」

雑渡は簡単に感想を口にした。
そうです、死んでしまいます。と伏木蔵は神妙に頷いて言う。

「でももう大丈夫です。もっとすごいスリルを僕はみつけちゃいました。こなもんさんの側に居ると僕はドキドキしてしまうんです。こなもんさんすごく怖いんですもん。怒らせたら死ぬより怖い目にあいそう。こなもんさん僕いつかあなたのねぇ、敵になるんですよ。」

将来の夢です。伏木蔵は貧血気味で青白い顔を僅かにぽっと火照らせる。はぁ、と雑渡は曖昧に相槌を打った。ほかにどう返していいものか分からなかった。


「こなもんさん」

ねぇ、お茶本当にお飲みにならないんですか。
子供が色目を使って勧める茶を、雑渡はわざと床に全部零してしまった。

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