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03:噛む  (雑伊)


03 噛む
 




 脈絡なく、口内に唇をこじ開けて入ってきた雑渡の指を、どうしていいか分からず伊作は瞬きした。ぱちぱちともの問い気な目線を無視して雑渡はただ荒れた指で伊作の口内をなぞっている。
ただ漁っている。
雑渡の意図が分からないので、伊作は果たしてこの指を吐きだしたらいいのか舐めればいいのか、途方に暮れていた。指はぐいぐいと無遠慮に奥へ進んで奥歯のギザギザやら上顎の内側に触れている。口の中に溜まった唾液を呑み込みたくて喉を使う。と雑渡の指が舌の奥をぐっと押さえつける。

「んむっ…!うっ、ぐ」

 反射的にこみ上げる嘔吐感に伊作は背を歪めて呻く。雑渡の手首を掴んで緩く頭を振ってみるも、雑渡の指は口内を弄るのをやめない。だらだらと口の端やら指やら伝って唾液が零れる。嗚咽のはずみで涙ぐんだ目で顔を上げると雑渡と目があった。

「伊作君が、こういうときでも歯を立てないところに優しさを感じられてさ」

私は君のそういうとこがとても好きだよ。
ふ、と嬉しそうに雑渡は目を細める。傍迷惑な、と伊作は唇を蠢かしたものの口内の指を持てあまして結局だらりと唾液が一筋零れるだけだった。

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