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02:つねる (利こま(利))


02 つねる
 




痛いです。

 利吉が頬をつねるので、小松田は抗議した。実際には頬を引っ張られているので、いひゃいです、と間が抜けた声になった。

「あ、ごめん」

 あっさりと利吉は謝罪の言葉を口にした。
いつも鋭い目をちょっと丸く開いて、どうも何か意外だ、みたいな顔をしている。何か腑に落ちないことがあるようだ。

「なんなんですか、もー。酷いなぁ。」

赤くなってしまった頬を手のひらで擦りながら小松田がぶつくさ言っていると、利吉はまた黙って白い指先を小松田の方に伸ばしてくる。ので、それを小松田はまた、はて、と首を傾げて見遣って、

「痛い痛い痛いっ!だからなんなんですかもう」

 今度は鼻をつままれて小松田は叫び声をあげた。利吉はそれをつくづく眺めて、本当に君は鈍いなと感心したようなことを言う。日頃、利吉をイラつかせては怒鳴られたり殴られたりの被害を被っている小松田が、自分の所作にまったく無防備なのが利吉としては不可解極まりない鈍臭さと思えるのだ。

「猿や犬でも一度危害を加えた人間には、容易には近づかせたりしないものだけどね。」
「はぁ…」
 
そうですか、と小松田は今度は鼻をさすって頷いた。言外に動物以下の物覚えだと言われていることには気づかないらしい。
利吉は殆ど好奇心で小松田の耳のあたりに手を伸ばしてみたが、小松田はやっぱりきょとんとした顔で利吉を見上げている。

「あのですね、」
「なに」
不意に小松田が口を開いたので利吉は指を止めた。

「酷い目に合うのが分かってても僕は利吉さんから逃げたりしませんよ。」

へらりと笑いかけたのが生意気だったので上下の唇を挟んでつねってやった。



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