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01:たたく  (鉢雷)


01 たたく
 



困っているんだ。
そう言って見せたとおり雷蔵は眉を寄せて顎の辺りに手をやって、困った顔をしている。どうせ三郎のことだろう、と話を聞いてやっていた竹谷が言うと頷く。
三郎というのは彼らの同級生だが、とにかく悪戯の好きな奴で、ついでにその悪戯より更に雷蔵のことが好きな変わり者なのだった。しょうもない悪戯をしでかしてはその結果を雷蔵にみせたがったりする。生物委員の竹谷としては、飼い猫なんかがよく取ってきたねずみや虫を見せたがったりするあんな愛情表現を連想させられるのだが、生憎雷蔵はただ困っているようである。
 
「本当困ってしまってさ。三郎がね…」

と、言いかけたところで、噂の三郎が喜色満面駆けてくるのを雷蔵の肩越しに竹谷は見た。あの得意顔は、なにか仕出かした顔である。立ち話をしているふたりの姿を見つけて、雷蔵、とだけ呼ぶ。

「いっそ頭のひとつでも殴ってやればいいんじゃないか?」

 投げやりに、竹谷は言った。
すると雷蔵はぱっと顔をあげて、そうそれ、それなんだ、と言う。

「あまり悪ふざけが過ぎるものだからこの前ひとつ殴ってやったら逆効果でさ。今度は僕に叩かれたくて悪さをするんだ。」

困ってしまうよ。 
雷蔵が眉を下げて言った。ちょうどそこらでようやく三郎が雷蔵の隣まで辿りついた。うるさく付き纏い始めた三郎の頭を雷蔵がぺしりと叩くと三郎はことさら嬉しそうに犬歯を見せて笑った。

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