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麗な手(利こま)/2万hitをお祝いして山崎シヅコ様に捧げます。


▽綺麗な手





どうしてだろう、とずっと考えている。
利吉は手を振り上げて、その理由を考えている。手を振りおろしてどうしてだろうと自問している。手を振り下ろす先では小松田という子が目を瞑って頭を庇って打たれている。
どうしてこの子どもを殴らねばならないのだろう。

 利吉は暴力で己の優位を誇示するような人間ではないし、嗜虐から性的興奮を得るような種類の人間でもない。小松田という少年は鈍臭くて気が利かなくて、利吉を酷く苛々させるが、利吉は憎くて人を殴ったりはしない。
利吉は本来優しく理性的な人間なのだ。それというのに何故だろう。


「僕のことをお好きなんでしょう」


 利吉の内心の疑念を聞いていた様に小松田が言った。

 小松田はさっきまで泣いて頭を庇っていたくせに、利吉の手が止まるとやがてそんなことを言う。ぐずぐず啜り上げている鼻からはまだ血が垂れている。

 利吉はそう言われるとカッとしてしまう。そんな生意気なことを言わせておくのが許せない気がして小松田の前髪を引っ掴んで滅茶苦茶に揺すった。
何故こんな酷いことをするのだろう。利吉は自分が不思議で仕方ないのだが、子供の言うとおり自分が小松田を好いているとはどうしても思いたくないのだ。
 
 利吉は腹が立って、小松田に何かしてやりたい、無理矢理何か従わせるようなことを命じてやろう、と思う。けれど思いつくのは小松田がまた自分が好かれているなどと勘違いを起こしそうな内容で、自分自身にまで腹が立ってしまう。
その上、また心の内を呼んだかのタイミングで小松田が言うのだ。


「接吻でもした方がいいですか」


 小松田の声はおどおどとこちらを伺うようなのに、言っていることはとても傲慢で笑ってしまう。

 そんなものは不要だ、とそういう目を利吉はした筈なのに小松田は利吉の目を見て迷うことなく唇を触れてくる。
小松田の唇は切れていて血の味がした。とっさに突きとばして、地面に転げた小松田を見下ろしながら利吉は小松田に訊ねた。


「君は、何故そう思うんだ」



何がでしょう、小松田の応えはいちいち鈍くさく察しが悪い。利吉は舌打ちする。


「何故私が君のことを好きだなどと思えるんだ」


小松田はまた苛々してきたらしい様子の利吉を上目に見て首を竦めた。


「今まで僕を愛しているとおっしゃる方は、大概僕を殴りますので」

そんな答えが泣きたいような気にさせて利吉はまた綺麗な手を振り上げたりするのだった。





サイト2万hitをこっそりお祝いさせていただきました。こそっ。

 
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