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馬鹿ふたり(白目と凄腕)/ドクササコ凄腕さん視点。平和な上司と部下。


▼馬鹿ふたり






 お前は全く仕事が出来ないな。
前々から思っていたが、今日は特にそう思った。たかだか戦地の視察だ。それだと言うのに陣地に帰る頃にはお前の着物はボロボロだし、あちこち擦り剥いているし、その怪我をどうしたと聞けば犬に追いかけられて転んだと言う。馬鹿か。いや、馬鹿だお前は。何故俺はお前なんかを連れて仕事をしているんだ。
と言ったらお前は白目ばっか目立つきつい目つきで口答えをする。


「確かに俺はまだまだ未熟です」
「知っている」

未熟というかそれ以前の問題を俺は感じるが、ひとまず話を聞いてやろう。近頃ではこう言い返そうとしてくる部下というのもまるで居ない。お前ぐらいだ、生意気な口を叩くのは。さて。


「アンタの配下の中で特に実力も抜き出てないし、頭も悪い、正直読み書きもヤバイ。自分の名前を書くのが精一杯だ。しかしです、」


どういう申し開きをするかと俺は次の台詞を待ったら、うっかり転倒しそうな台詞が返ってきた。


「掃除や洗濯や身の回りのお世話なんかも出来ないんです」
「そこも出来ねぇのかよ」



それは純粋に役立たずと言うんじゃねぇのか。
大体日本語おかしいだろ。今のは完全に実力ないなりに家事炊事で頑張ります、とその流れだっただろう。頭悪いにも程がある。


「そんな駄目な俺をですね、アンタはこう近くに仕えさせているわけで」


とお前は言うわけだ。
普通に考えてここはこんな駄目な俺を働かせてくれてどうもありがとうございます、という台詞が出てくると思うわけだが、普通よりは遥かに頭の悪いお前だからさて、どう出るか。


「アンタは俺のことが好きなんです」
「好きじゃねーよ」


なんだそれは。逆告白か。ちょっと今笑っちまっただろうが。

「あれ?」


おかしいな、とお前は首を傾げるがおかしいのはお前のボウフラにも劣る脳みそであることを自覚するが良い。
しかしこのボウフラ野郎は人知を遥かに超えて、馬鹿だ。


「でも俺はアンタを好きですよね?」
「…。」


聞くんじゃねェよ。手前のことだ。ボウフラめ。お前の一ミクロンの脳みそは手前自身のことも分からずに一体何なら理解出来るんだ。


「馬鹿」


俺は言った。シンプル極まりないこの二文字が全く分からなければお前はボウフラ以下だ。ミジンコだ。微生物だ。俺の意識の億万分の一の低次元で一生光合成でもしているがいい。おい、今なんでそこで笑った。ミジンコ野郎。頭を叩いてやると、如何にも空です、みたいな音がした。


「やっぱ、アンタ俺のこと好きです。他の奴らにそんな楽しそうな顔見せないじゃないですか。」


俺もです、とお前はまた訳の分からない日本語の結び方をする。何がだ。
笑ってしまう。この緩い気分は別段不快でもないのが俺も大概と言うかなんというか結局のところアレなのだ。



馬鹿め。



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