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白(雑渡→凄白凄?)/雑渡さんのドクササコいじり。白目捕まる


▼白



酷い不細工な顔だ。
忍務から帰ってこない一際出来の悪いうちの部下を俺がみつけたところ、そいつは顔から出すもの全部出して俺を見上げた。ずるずる啜り上げている鼻からは血が噴き出していて、腫れて膨れ上がった目でめそめそ泣いている。
本当に出来が悪い。
 
 更に最悪なことにこの阿呆は最悪な男の手に落ちていた。阿呆の擦り切れた着物の襟を掴んでぶら下げている男は、雑渡とか言う余所の城の忍び組頭だ。和平交渉だとかなんとかで一度顔を合わせたが、酷く嫌な性格をしていたのを覚えている。
 阿呆のせいで嫌な顔を拝むことになった。


「これ、君のところの子?」


野郎は犬でも拾うみたいに、うちの阿呆を掲げて見せて、頂戴、なんて言う。


「あ?」
「うん。この子捕まえたんだけど、頂戴。」


 全くの意味不明だ。うちの阿呆は現状、仕事も損なってぼこぼこに顔を腫らして敵の手にぶら下がっている体たらくからして出来が悪い。
稚児趣味でもあるのとして、それはそれで目の前の野郎の趣味を疑う。


「体術は全然だけど、すばしっこいねこの子。いいなぁ、私に頂戴。」
「・・・手前にやったら、すぐ殺すだろうが」


 俺が言ったらぴくりと震えて阿呆は顔を上げた。露骨に不安そうな顔しやがる。これでも俺が忍びとして育てた男だろうか。嘆かわしい。
 


「嫌だな。勝手に死んじゃうんだよ。私は君みたいに、自分の面倒をみれない子を助けにきたりしないからね」
「面倒が見れないなら犬を飼うんじゃねぇよ」


 嫌な奴だ。感じが悪い。
前に顔を付き合わせたとき、人手不足を嘆いていた。原因は想像に難くなくて胸くそが悪い。

 野郎は首を竦めて笑う。笑い方がまた小娘みたいなのが癪に障る。
どさ、っと音がしてうちの阿呆が返却された。
泥と血でひたすら汚い。


「ふふふ、冗談。酷い顔、真っ白だよ。」


 一瞬、俺のことだと分からなかった。
野郎はひとしきり笑って、藪の中に消えていった。馬鹿にされたらしい。阿呆な部下を持ったばかりに恥をかく。

俺は阿呆の頭を一発殴って怒鳴りつけようと息を吸い込んだ。
ところがこの阿呆が、どこにそんな元気があるものかおおよそ体当たりの風体で俺の腹に飛び込んでくるから、俺はぐぇっと変な声が出た。
阿呆は餓鬼そのものに泣きじゃくる。汚ぇ。酷い不細工だ。


「うぁあああ、好きです!」


阿呆は謝罪でも助けられた感謝でもなく阿呆な台詞を叫びながら、鼻水と涙の汚い顔で俺に接吻など迫るのが馬鹿らしい。ちなみにしょっぱかった。




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