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子供嫌い/(こま利) 利吉が良い子たちに「触らないで」っていうわけ


▼子供嫌い



教師をしている父の赴任先を訪れると、利吉はさっそく学園の良い子たちに囲まれた。わぁ、と歓声すら上がる。この学園は、傍からすればそんなものあるのかと疑ってしまう話だが、忍者を育てる学園で、利吉は子供らが目指す忍者というものそのものだから憧れの的なのだ。だから良い子たちは無邪気に利吉に手を伸ばす。
利吉はほとんど条件反射の様にそれを払った。大人気ない、というのはあとで思いついた。

「触らないでくれる?」

言った瞬間の、鳩が豆鉄砲を食らった、そんな感じの子供たちの目が忘れられない。




「どうして子供はなんでもかんでも触りたがるんだろうね。」
「え、僕に聞いてます?」

学園を訪れるにしろ去るにしろ、誰もが顔を合わせなければならない男というのがこの学園の門脇にいる。小松田秀作という学園の事務員で、おそろしく仕事が出来ないため彼の専らの仕事は門の入口に張り付いて、通る人間に入出門のサインをねだることである。
その小松田に出門のサインを遣りながら利吉は話しかけた。

筆を走らせる利吉隣にぴたりと張り付いていた小松田は、ちょうど何か思いついた様に利吉の横顔に手を伸ばしかけたところだったが、利吉が口を開いたので寸前で指が止まった。小松田は字が下手だから、指先がところどころ墨で汚れている。

「君の他に誰かいる?」
「…いませんね。」

へらっと笑ってみせた小松田の指はまだ所在無げに利吉の顔の周りをさ迷っていて鬱陶しい。

「触らないでくれる?」

今度は罪悪感を伴わずに言えた。

「あっ、それ、入ってきたとき一年のみんなにも言ってましたね。」

何処で見ていたものか小松田は思い出したように、ああ、と頷いた。それから利吉を見上げる。

「大丈夫ですよ。汚くないですから。」

利吉は、別に子供や小松田の手が汚れているとかそんなことを思って拒んだわけではなく、ただ別の理由で触られたくないと思ったのだが、それはさておき小松田の墨のついた指のことは眉を顰めて見た。

「汚れてるよ。」
「血の匂いなんかもしませんし。」

一瞬、利吉は意味が分からず口を噤んだ。

「利吉さんお優しいから、生臭い仕事のあとは子供に近付かれたくないんですよね。でも、利吉さんはお綺麗ですから、気にしないでください。」

汚くないですよ、と言われて利吉はぎくりとした。
小松田は、自分の手の汚れにも気がつかない癖に、利吉の案外繊細な腹の内に気付いたりする。そんなこと分かられるくらいなら、子供嫌いの冷たい男だと思われた方が万倍マシだった。苛立ちと気恥ずかしさに利吉の頬に朱が差す。

「…見透かすようなことをいうのはやめてくれ」

話を聞いているのかいないのか、痛そうに顰めた利吉の眉間の皺を興味深そうに小松田は指先で撫でた。

 


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私は小松田に夢を見過ぎています。
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