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餓鬼※/ ちょっとグロい表現があります。部下が人外。部下雑


▼餓鬼 (部下×雑渡)


 鬼が居た。
それはまだ年若い子供と大人の丁度境のような何の変哲も無い、どちらかといえば愛らしいと思える部類の顔をした、男の姿をしていた。鬼はとある男に自分なりに丁寧に呼びかけた。丁寧に呼びかけたのは男のことが大層気に入ったからである。

「ねぇ、アンタ。なにか欲しいものはないんですか」

なんだって?
呼びかけられた男は振り向いた。男は雑渡昆奈門という名でほんの一、二年前、近くの城に雇われたばかりの身である。今は合戦場の片隅で敵陣から何かしら得る情報はないかとこそこそ嗅ぎ回っている最中である。その合戦場にひょっこりと汚い着物一枚で現れた子供のような男に訝しげな顔をしている。
鬼はぺろりと舌なめずりをした。

「なんでもいいんですよ。欲しいものは無いんですか。して欲しいことは無いんですか。なんでもいいんですよ。代わりにアンタの何かを貰うから何でも言って良いんですよ」

雑渡はこれは気違いだろうと思ったらしかった。五月蝿そうに眉をしかめると戦塵と切り結ぶ人群れで霞んで見えない敵陣を指差す。

「敵将の首でも持ってこれるかい?」

 明らかに馬鹿にした笑いを浮かべて雑渡は言ったのだが、鬼はにやぁっと顔一面に笑みを浮かべた。
どちらかと言えば愛らしい顔をしている鬼であったのでそれは一層無邪気に見える顔であったが、雑渡は一瞬寒いものを感じた。
鬼はどこから出したか汚い布一枚出すとそれで顔を覆った。着物一枚の軽装であるけれど覆面一枚で随分忍びにいくらしい風体になる。
 鬼は駆け出す前にじろりと雑渡の頭から爪先を舐めるように眺めた。

「右か…左か…」

小さく呟いて鬼はにたりと笑う。なんのことかと雑渡が尋ねるより早く鬼は合戦場を飛び交う矢の間を風のように駆け抜けていった。


生血の滴る敵大将の首を片手に戻ってきたのはその僅か数分後のことである。


「まさか」

雑渡は放り投げられた首を腕の中で受け止めて呟いた。宙を飛んできた生首は毟り取られたような切り口からまだ暖かい血を振りまいていて雑渡の顔をべたべたと汚した。

「ご褒美下さい」

鬼はにこにこと笑って血のついた雑渡の顔に鼻先が触れるほどにずい、と近づいた。

「右か…左か…どちらをくれますか」
「…左、」

雑渡がなんとなしに答えると鬼は雑渡の頭を両手で抱き寄せて真っ赤な舌で雑渡の左の眼球をべろりと舐めた。驚いて閉じかけた雑渡の瞼を、鬼は右の人差し指と親指でぎゅっと開くように固定して舌が目尻の端から目玉を掘り出すように動く。

「貰いました」

飴を貰った子供の様に笑う鬼の口の中には雑渡の目玉がある。視界の失われた顔半分を覆って愕然としている雑渡に鬼は早口に問いかける。

「次は何が欲しいですか。何をして欲しいですか。何をくれますか。さあさあ、仰ってください。仰ってください。何が欲しいですか。何をくれますか。さあさあさあ!」


雑渡は口の端を歪めて顔をあげた。















「そんなに探してももうお前にやるものは大して無いよ」


後ろから抱き込むように回した手で着物の袷から身体の表面をごそごそと這いまわる手を雑渡は叩き落した。

「いえ、まだまだ色々あります」

叩き落された手をひらひらと振って、相変わらず人間となんら変わらない姿をした鬼は答えた。鬼は今では諸泉という名まで持って居る。
諸泉はくんくんと鼻を鳴らして欲深そうな目をして雑渡の身体を嗅ぎまわった。鬱陶しそうに向き直った雑渡の顔に両手を添えて薄い唇を指でなぞる。そのまま指を突っ込んで奥歯の数を数えたり舌の奥を押さえたりしているのは次に欲しいものを探しているらしかった。
 ここ数年で雑渡の身体は皮膚を持っていかれたり足の指を持っていかれたりと継ぎ接ぎの細工の悪い人形の様になっていたが、鬼に貰った大将首で初めの出世を遂げてから今では百人の忍を纏め上げる組頭の身の上と羽振りは良い。
 諸泉の指が喉奥にぐっと押し入ってきたので嘔吐きそうになって雑渡は諸泉の指を強く噛んだ。
慌てて引っ込めた指に滲んだ血と雑渡の唾液が混じる。その指に諸泉はちゅっと口付けた。
そうして自分の指に付着した血と唾液を舐めて綺麗にしてしまうと今度は口内を弄られて口の端に唾液を零した雑渡の口を物惜しげに見ながら唇を寄せる。

「お前には接吻一つだってただでやらないよ」

勿体無い。雑渡がからかう様に言うと諸泉はむっと眉を顰めた。

「…おっしゃってた仕事、片付けました」
「そう」

雑渡が笑みを浮かべるのと同時に噛み付くように諸泉は唇を合わせてくる。
良く出来た部下が欲しいと言ってみた雑渡の要求は鬼が雑渡の身体から全てを食い尽くすまで叶えられるのだった。




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