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覚悟の門/(こま利) 小松田に見つからずに門を超えてみようとする利吉。(


▼覚悟の門




 忍術学園の門には妙に鼻の効く事務員が立っていて、これに見つからず学園の中に入ることはまず出来ない。
という決まりが学園ではある種七不思議だとか都市伝説のように定着している。
 その学園の長い長い塀の、人気のなさそうなところからするりと忍び込んでみた利吉はそのお約束の揺ぎ無さを身を持って確信した。
長屋の裏の庭の、さらに隅っこの茂みの影からそっと顔を出したその鼻先に、忍術学園事務員の小松田秀作が立っていたのである。


「あ、いけないんですよー。そんなとこから入って。」
「うわっ」


張り付くような位置に現れた小松田に利吉は声を上げて飛びのいた。
些か大げさな態度ではあるけれど、絶対に見つかるまいと思っていた利吉にすればそれほど驚いたのだ。利吉は非常に優秀な忍であるし、小松田というのは忍を志すもあまりの鈍臭さに働き口がとうとう見つからなかった、というような男だったのでそんな男にみつからない自信は利吉の中では絶対だった。
ひく、と口の端を引き攣らせて固まっている利吉を他所に小松田は塀を見上げて高いですねぇ、よくこんなとこ登れますねぇ、なんて関心している。

「でも、何でこんなとこから。」
「君に会いたくなかったんだよ。」

利吉がようやく我に返って嫌味らしいことを口にすると、小松田はほぉ、とのんびり相槌を返した後たっぷり間を空けて、えぇっそんな!と驚いて見せた。どうしてこう鈍い男にみつかったものだろうか。くらりと眩暈が襲う。
小松田はと言えば利吉に避けられたと知って大慌てである。利吉の細い肩をがっしと掴んで詰め寄る。

「そんな、僕は、いつだって利吉さんにお会いしたいのに!」

僕、利吉さんのこと好きだってお伝えしましたよね。
と小松田が言うので利吉は頭を抱えた。

「だから、それが鬱陶しいんだ…。」

 利吉の言葉も態度も極めてシンプルで分かりやすいものの筈だった。ところが小松田はえぇー、分かりません、と言って利吉の肩を掴む手を離そうとしないのである。ひょっとしてこの小松田というのは言葉が通じない程、馬鹿なんだろうかと利吉は思ってしまう。ふっ、と脱力して空を仰いだりする。面倒臭い。いや、面倒がってる場合じゃない。よし。

 ややあって気を取り直した利吉は、膝を落として小松田と顔を見合わせた。目を見てしっかりはっきり分かりやすく、私は君が嫌いだと言うつもりだった。
嫌いというのは言いすぎだったが、出来る限り分かりやすく単純な言葉が良いだろう、と小松田の知能を馬鹿にしきった心算で利吉は口を開く。ところがぱちりと目が合った瞬間、口を開いたのは小松田が先だった。


「あ。」
「あ…?」


ぽつりと呟かれた感嘆詞に利吉も釣られて口を開いた。
その口を小松田が塞いだのである。口で。


「……うわぁっ!」


凡そらしくない、本日二度目の悲鳴を、利吉は叫んだ。
何をするんだ、と続いた言葉は怒りと驚愕で掠れていた。小松田はあれ、と首を傾げた。


「人気の無いところで二人きり、目があったとき、…は口吸いのタイミングだってどっかで聞いたんですよね。」

何か違ったかなぁ、と呟いている小松田は妙にマニュアルに忠実な男だった。畜生、この男とは二度と人気のないところで二人きり、などになってやるものかと利吉は歯噛みした。
ところで小松田はどこから学園に入ってきてもそれを見つけてしまう様なので、人の居ないところを選んで入ってくると必然的にふたりきりになってしまう訳である。利吉は観念した。


「…次から正門から来るから。」


やったぁと小松田ののん気な歓声を聞きながら、負けた、と利吉は思った。


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最初に思いついたタイトルは「恋の追尾ミサイル」でした。

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