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影/※暴力描写有り 部下雑


▼影




 まず最初に諸泉は男の喉を潰してしまった。それから肩の関節を外して、両足の骨も叩き折ってしまって逃げられないようにした。
布団の上には元々手負いの全身火傷だらけの男が居て、諸泉はそれに圧し掛かって思いつくままに暴行を加えている。
男には左の目が無くて、残る右目もたった今、諸泉は指で穿り出したところである。
手のひらの中で、ぬるぬるする血塗れの目玉を転がして諸泉は空しげに溜息を吐いた。



「こんな偽物、何処で誂えてきたんですか」


組頭、
諸泉がどこへともなく呟くと天井裏からくつくつと笑い声が降ってきた。


「なんだ、バレていたのか」



 さて、布団の上には全身火で焼かれたケロイド塗れの男が全身に包帯を巻いて転がっている。辛うじて生きている男は何か呻いていたが喉が潰れているので言葉を発することは出来ないらしかった。
天井裏から音も無く降りてきた雑渡は布団の上の男をちらりと見て、それから諸泉に向かって首を傾けた。
何処で分かったの、
雑渡の質問に諸泉は何を馬鹿げたことをという顔をした。


「顔が全然違うじゃないですか」


 雑渡の顔や身体は昔負った火傷で赤黒く焼けて膿んでいる。
顔の判別も何もないと思って雑渡は自分の姿に合わせて男の顔を焼いて身体を焼いて目を潰して自分の代わりに部屋に置いてみたのである。
どうするかと天井裏に潜んで様子を見ていたら、諸泉は一目見るなり馬鹿馬鹿しいと言って折角仕立てた影武者の喉を潰して骨を折ってぐちゃぐちゃにしてしまった。

「顔がねぇ、」

見分けがつくものだろうか、と雑渡は感心したような呆れたような溜息を吐いた。

「アンタの方が断然、私の好みです。」


 諸泉は無遠慮に汚れた手を伸ばして雑渡の顔に手を添えるから雑渡の顔を覆っている包帯は赤い指の跡がついた。
可笑しそうに眼を細めている雑渡の首の後ろに手を添えて引き寄せる。雑渡は口付けを拒まなかったので機嫌が良いらしい。陰惨な状況を他所に、空気の変わった部屋の布団の上で不安げにもがいている男がなんとなく諸泉の視界の端に映った。
―それにしたって悪趣味だ。呟いた台詞は赤い舌に絡めとられてしまってうやむやになった。



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