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白痴3 (部下雑 現パロ。白痴雑渡さん3話。微エロ)

▼白痴



3、それから、シーツにて




男の爪先から顔までを覆う包帯の下は拷問のあとがあるのだと言っていた。
その言葉を真に受けるではないが、俺は拷問という台詞からなにか恐ろしげな形相を想像していたのだ。その所為で、男の包帯の下の顔をみたとき酷く驚く羽目になった。
晩のことである。

「醜いだろう。」


巻きなおして欲しいとせがまれて男の包帯を解いたきり、硬直してぴくりとも動けなくなった俺に男はそう言った。目の前で薄ら笑みを浮かべる顔は、綺麗だった。恐ろしく整っていた。傷一つ、火傷あと一つ無かった。
いえ、となんとか振り絞った声が掠れる。なんのせいだろうか、緊張している。

「いえ、綺麗です。」
「そんなことを言うのはお前くらいだよ。」

くくく、と男が肩を竦める。伏せる睫毛が長い。すっと鼻筋が通って薄い唇が薄情そうなのに、ぱちりとした猫目は懐っこい。衣服を脱がせて、包帯を解く。始めてみるまでなんでもないことの様に思えた作業が急に酷く後ろめたく感じるのはこの顔の所為に違いない。無駄に端正な顔しやがって、と俺は思った。
傷跡と火傷跡塗れ、ということらしい男の肌は熱と刺激に弱く、しかし清潔に保たねば膿んでしまうそうだ。そこで俺はシーツの上に寝かせた裸を、湯で固く絞ったタオルで丁寧に拭き清めていったがそれはおそろしく心臓に悪い作業で、例えば男の首の案外細く綺麗に鎖骨が浮いているのやら、脇腹の辺りを拭く間少し擽ったそうに眉を寄せているのやらに気付く度、俺は幾度も眼を反らして赤面した。

「今日のお前は手際が悪いね。」
「…もう終わりますから!」

男の足を掲げ爪先まで拭き清める頃には俺は背に妙な汗をかいていて憔悴しきっていた。耳の先が燃えるように熱い。早く済ませてしまおうと思いながら、足の指の股を丁寧に拭っていると男が、んっ、と擽ったそうに鼻声を洩らした。ぎくりと心臓が痛い。知らず喉を鳴らすと、男が含み笑いした。

「ねぇ。」

勃ってるよ、お前。
指摘されてカァっと全身が焼けついた様に熱くなった。と同時に腹が立った。人が敢えて意識しないようにしているのにぬけぬけと言ってくれる。

衝動のまま男の身体に覆い被さると男はまだ笑っていた。拒まれていない。拒まれていないがそれは頭の弱いこの男が俺を尊奈門という人間と誤解して疑わない所為なのだ。逡巡。しかし結局その場の興奮に負けた。喉元に噛みつく。ひゅっ、と鋭く息の通る音が聞こえた。平らな胸を性急な仕草で弄ると、架空の傷が痛むらしい。男は少し眉を潜めて身じろいだ。

「…あまり乱暴に触られると痛いよ」

非難の声が刺さる。実際には傷一つ無いのを分かっている俺は平気でつんと立ち上がった乳首を摘まみ、爪を立てる。あっ、と息を呑むように悲鳴が上がって男の指が俺の肩口を握りしめた。は、と息を吐く。

「……痛くするなら、しない。」

拗ねたような声音を出す男の目が濡れている。これまで男を抱いたこともセックスの最中に酷いことをする趣味も無かったのに興奮した。薄ら汗の浮かんだ肌をざらりと舐めればそんな刺激だけでも男にとっては剥き出しの傷口を触れられる痛さか、爪先を引き攣らせて震えた。それでも吐く息に熱が籠っている。

「っあ、痛…」
「痛いのがお嫌いじゃないでしょう。勃ってますよ。」

くくく、と先ほどと逆に笑ってやると男がきっ、と屈辱そうな顔をしたがこちらの肩口に添えられた手はそのままで誘うように爪先で首の後ろを擽った。ぞくぞくと背中の粟立つように心地よくて我を忘れた。
爪を立てて腫れあがらせた粒を口に含み転がす。あばらの下から骨の浮き出た腰、内腿の際どい処まで舌で辿り降りていって、淡い茂みの下、緩く勃ちあがりかけている性器へ口づける。指で扱きあげるようにしながら濃い色の先端に弱く歯を当てると、男の腰が跳ねた。

「んっ…く、」

小さく噛み殺す声がいやらしい。舌先で抉じ開けるように嬲る割れ目から苦い蜜が滲む。目尻が赤く染まって息が荒い。喉の奥まで咥えて唇で扱きあげるようにすると足の付け根が痙攣して絶頂が近いのが見て取れた。
このまま一度達するか尋ねると、首を縦に振った。快楽に我慢強くは無いと見える。

「っ、あ、あ・・・!あー・・・」

長い溜息のような嬌声で男は仰け反り射精した。




口で一度、中を貫かれるセックスでもう一度射精に達したあと男は疲れたようで裸の身体を投げ出して眠った。
精液と汗で汚れた身体をもう一度綺麗にして、真新しい包帯と衣服を男の身体に巻きつけ終えたのち傍らで俺もいつのまにか寝ていたらしい。
頬に風を感じて目を開くと男が窓を開けていた。そのまま裸足の足を窓枠にかけて身を乗り出す。俺は見るなり窓際に飛びついて男のシャツの襟首を掴まえていたが、些か乱暴すぎた。男が部屋のこちら側に落ちて、驚いた眼をする。俺は勢い良く窓を閉め鍵をかけた。

「何処へ行くんです!」

何故だろうか、大きな声が出て、不思議そうに瞬いている男の目に見返され我に返った。
親切で世話を焼いてるつもりがいつの間にか男を騙して犯して軟禁している。

「あ、……すいません。」

茫然として小さく言った俺に男は、辺りを見にいこうとしただけだとかちゃんと帰ってくるよだとか、子供をあやす様に俺に話しかけるのが奇妙だった。もう一度小さく消えるようにすいませんと呟く。
多分尊奈門を名乗った時から、俺は尊奈門に取り憑かれているのだ。居もしない人間のことをふとそんな風に思った。




  

10/5/24






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