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けてなんてやらないよ(伊作) / 優しくない伊作


▼助けてなんてやらないよ
 

 
うろうろ、
きょろきょろ、と

死体の山の中を伊作が歩いている。

折り重なる物言わぬ塊の中で生きている者がいると、不思議と伊作にはそれがちゃんと分かって山の中から引きずり出して手当てを始める。

「助けてくれ」

誰かそう声をかけるものがあった。伊作が振り向くと酷く怪我をした兵士が居た。伊作はその男の傷口を清めて包帯を巻いてやった。
男が礼を言うと伊作は不思議そうに眉を顰めてそれから黙ってそこから立ち去ってしまう。


そしてまた、うろうろ、
きょろきょろ、と

死体の山の中を伊作が進んでいく。

「助けてくれ」

誰かそう声をかけるものがあった。伊作が振り向くと両足の腐りかけた兵士が居た。

「殺してくれ。楽になりたい」

男が言った。伊作が見ると男の足はもう使い物にならないようであったし、他の部位まで壊死が広がりそうであったので、すぱんっと切ってしまって傷口を包帯で巻いて止血もしてやった。
伊作が満足して立ち去ろうとすると男は恨みがましい呻き声で呼び止めた。

哀れだと思うなら、手当てではなく止めを刺していってくれ、男はそう言った。

「すみませんが、僕は忍なので誰かを哀れんだりしませんよ」

伊作は煩わしそうに眉を顰めた。

伊作はそこに生きている身体があるから手当てをするのが当然だと思っているので、自分の手当てのおかげで誰かが家族にまた会えるようになったとか、自分の手当てで誰かが不自由な身体で犬のような人生を歩まなくてはいけなくなったとしても本当にどうでもよかった。

男が何も言わなかったので伊作はまた山の中を歩き始めた。

うろうろ、
きょろきょろ、と

包帯が尽きるまで15人の死に損ないを拾った伊作は9人に礼を言われて6人に呪われた。
ただそれは伊作にとってどちらも本当にどうでもいいことである。


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